版元さんリレーエッセイ

2023.10.5 第354号

トゥーヴァージンズ 綾女欣伸様

昨年に編集者として独立したのですが、ご縁あって今はトゥーヴァージンズという出版社でも仕事をさせてもらっています。なので半身はフリー編集者、もう半身は版元編集者という、大谷選手の何億分の1くらいの意味では“二刀流”のような状況ではあります(そのような勤務形態を許してもらっているトゥーヴァージンズには感謝しきりです)。

フリーのほうでは美術展カタログを編集し、デザイナーに話を聞いてフリーペーパーを作り、地元鳥取の情報誌に原稿を書き、今はひたすら翻訳書原稿のチェック。版元のほうでは連載メディアに著者から原稿をいただき、単行本やシリーズの企画を仕込み、イベントの企画書を提出して、この夏は同僚が企画した展示も手伝いにいきました。そうやって発注側と受注側の両方から出版界を眺めると、次に原稿依頼するときはもっとここに気を配ろうとか、時間あたりの作業量と対価のバランスなどなど、さらに見えてくることがあります。

ほかにも身が引き裂かれてあることの利点はあって、たとえば、(A)僕個人に編集仕事の依頼が来てまだ版元が見つかっていないものを会社の企画会議にあげたり、逆に(B)会社の会議では通すことが難しくなった企画を独立系の版元に持っていったりして、しかもどちらも自分が編集し本を作る、つまりグラウンドに立つことができるのです(会社で働いているならふつう後者はその版元の方が編集する)。一人出版多様性推進運動に参画しているような気にもなって、願わくばもっとこうした編集者の“二刀流”(何刀流でもいいけれど)が広がっていけば出版界もさらに面白くなるのかなと思っています。

そんなわけで、この冬から新春にかけては、京都ホホホ座浄土寺店の山下賢二さんの散文・詩集(タイトル未定)と、写真家の山本美里さんの『透明人間 Invisible Mom』が出版される予定です。どちらが(A)でどちらが(B)なのかは、ぜひ書店でお買いあげくだされば……わかるはずです!

【綾女欣伸様 プロフィール】

鳥取県生まれ。大学在学中からインディーズ音楽レーベルで働き、朝日出版社を経て、現在はフリーで編集をしながらトゥーヴァージンズでも働く。過去に『本の逆襲』(内沼晋太郎)、『紋切型社会』(武田砂鉄)、『神様の住所』(九螺ささら)、最近は『Chim↑Pom展:ハッピースプリング カタログ』や『デザインの両面』などを編集

*編集長綾子より

綾女様ありがとうございます。書店のお客様は作り手側(出版社さん)のお話を聞く機会があまりないので、とても面白いです!綾女(あやめ)さんという名字も初めて聞きました!

当コーナーは各出版社の社員さんによるコーナーで、2000年より、毎月続いています。昨今はコロナの影響で、他社さんとの飲み会もなく、横のつながりが希薄になったなどという声もお聞きします。これからもリレーを繋いで頂くべく、よろしくお願いいたします。