「ホードーカン?」私の滑舌が良くないのか、耳慣れない社名のためか、電話や訪問の際、このように確認されることがたまにあります。そんなとき、「法律の法、大蔵省の蔵、そしてやかたの館なのです…」と答えると、(あ。ホーゾーカンか)と担当さんとの面会がかないます。
法蔵館。何を得意とする出版社かって?字面から法律関係と連想されることもままありますが、仏教書・宗教書専門の出版社です。書店さんの中では人文書の棚に入ることが多く、仏教・宗教・思想・歴史・民俗学といったジャンルで私たちの本をご覧いただけます。
書店さんへ訪問する際、私はまずお店全体を散歩するようにしています。各ジャンル担当さんのセンスが光るポップに刺激を受けたり、棚をそぞろに見ていると思いがけない本に出会ったり。そうしてお店の雰囲気を感じ取りつつ担当さんに会いに行きます。
仏教書といえば、内容が難しい印象があるかもしれません。もちろん、そういう一面があることは否定できませんが、新刊に詰め込まれたメッセージをいかに読者に届けるか、試行錯誤の毎日です。
折に触れて、会社へ「読者カード」が送られてくることがあります。買われた書店さんの名前、書名、ご感想、出してほしい本のテーマやリクエストなどが丁寧に書かれています。生きることに真摯に向き合い、人生のさまざまな課題を明らかにするヒントを得るために手に取られた方、新たな研究の扉を開くために読んでくださった方。ネットのレビューとはまた違った、読者との大切な対話のひとときです。
最後に一つ告知を。法蔵館ではオリジナルの文庫レーベルを創刊しました。昨年十一月に三周年に突入したのを機に、ご縁のある書店さんで文庫フェアを実施中です。この一月からは、メトロ書店熊本本店さんでもご展開いただいております。是非ご来店ください。また、このコーナーをお読みいただいた皆さん、「法蔵館(ホーゾーカン)」を以後お見知りおきのほど…。
【秋月俊也様(あきつき・としや)プロフィール】
昭和五七年大阪に生を享け、法蔵館に草鞋を預けて早一三年目。編集に少し携わった後、現在は営業に専念。新本・古本はもちろん、いわゆる紙モノ全般が好き。今読んでいる本は、『阿弥衆』(平凡社)
*編集部より:秋月様楽しいコラムをありがとうございました。