ステンドグラス

2022.4.5 第336号

ミス・サンシャイン

メトロ書店副会長 川崎紀子

吉田修一さんの「ミス・サンシャイン」(文藝春秋)を読んだ。

 娘は前々から吉田さんの熱烈なファンで、「パーク・ライフ」で芥川賞賞を受賞された時も大喜びで、私に読むようにと勧めてくれた。

 それは私も学生時代によく訪れた日比谷公園を舞台とした爽やかな物語で、今も読後感が心の隅に残っている。その後吉田さんは様々な人間模様を描き続け、「悪人」で確かな地位を確立された。インタビューで「登場人物が勝手に動き始め出した」、と言われたのを良く覚えている。

 さて「ミス・サンシャイン」は初めて原爆にふれられた作品だ。長崎出身なのになぜ原爆のことを書かないのかと、良く聞かれたと述べておられたが、どのように描かれたのかと読み進んだ。

 往年の大スターとかかわり合いを持つことになった青年がいつしか心ひかれていく。下敷きになった懐かしい映画の数々。これは京マチ子、これは岸景子。色んなスターをうまく溶け込ませている。きっと映画がお好きなんだろうと思った。

 終盤、主人公の青年が彼女の手を取るシーンがある。「やだー私なら手を引っ込めるわ。年寄りのシワシワの手を見られたくない。でも若い男の人に手を取られたりしたらドキドキするかも」などとありもしないことを想像してしまった。

 題名の「ミス・サンシャイン」に込められた意味も悲しい。ぜひ読んで下さい。

書籍名 ミス・サンシャイン
著者 吉田修一/著
出版社 文藝春秋
価格 1,760円
概要 大学院生の岡田一心は、世界的に活躍した伝説の映画女優「鈴さん」と出会う。彼女との交流で、本当の優しさに触れた。吉永小百合推薦
ISBN 9784163914879