三体問題
「三体」という言葉を聞くと、SF小説の「三体」を思い浮かべます。初めて小説のタイトルを見たとき物理の「三体問題」を想像しましたが、やはり三体問題に関係する内容でした。小説で三体問題が注目されると、一般の人向けに解説したブルーバックスの「三体問題」が出版されました。
天体が2つまでなら、天体の位置を数式で表せますが、天体が3つ以上になると特別な場合を除き、天体の位置を手計算で解ける形の数式で表せません。コンピュータを使って計算すれば天体の軌道を予測できますが、天気予報と同じで僅かな初期値の違いで結果が大きく変わり、長期間の予測が困難になります。これは複雑系、カオス(混沌)と呼ばれ、物理の難問のひとつです。
ここで、この本にない例も紹介します。宇宙探査機が目標惑星に向かう時、厳密には太陽や地球、月、目標惑星などの影響を受ける「多体問題」を解く必要があります。近似的に解くには、探査機に最も引力の影響を与える天体の影響圏に入ったら、探査機とその天体の「二体問題」に置き換え、さらに次の天体の影響圏に近づいたら、その天体との二体問題に置き換えて、次々と天体を切り替えて行く「パッチドコニック法(二体軌道接続法)」という解法があります。つまり、多体問題を二体問題に分けて接続していく方法です。
今、世界情勢はウクライナとロシアの二体問題ではなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国などが関係する多体問題であり、未来を予測できない混沌とした状況にあります。トランプ大統領の停戦交渉の先にある最終的な目標はロシアや中国の弱体化とアメリカの国益にあり、各国と個別に二体問題を次々と解きながら最終的な目標へ向かっています。あくまでも、政治の素人が俯瞰して眺めた個人的な感想ですが、まるでパッチドコニック法のような気がしています。さて、この方法がうまくいくかどうか、トランプ大統領のお手並み拝見といったところでしょうか。
書籍名 | 三体問題 : 天才たちを悩ませた400年の未解決問題 |
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著者 | 浅田秀樹 |
出版社 | 講談社 |
価格 | 1,100円 |
概要 | 3つの天体の運動は一般化できるのか?2つの天体の運動は、ニュートンの万有引力の法則で知ることができる。しかし、それが3つになると!?オイラーやラグランジュによって、特殊な条件下での「三体問題」の解は発見されたが、その一般解を見つけることはできなかった…。その数世紀にわたる未解決問題と科学者たちとの格闘は、のちにカオス理論やさまざまな天文学へと発展していく! |
ISBN | 9784065228449 |