空手に先手無し?
空手道には、有名な格言がいくつかあります。「空手に先手無し」、「人に打たれず、人打たず、事なきを基とするなり」などです。沖縄に出張した時、「空手に先手無し」の石碑の前で記念写真を撮ったこともあります。
この格言を聞くと、次男の夏休みの作文の宿題を思い出します。空手を習っていた次男に、これらの格言は日本の「専守防衛」の考えに近いもので、世界中の人々が武道を学べば平和になることを、修学旅行で長崎原爆資料館に行って学んだことに関連付けて書いたらどうかとヒントを出して、なんとか締め切りに間に合いました。
「空手に先手無し」の意味は、むやみに空手を使ってはいけないという戒めだけでしょうか。確かに、空手の形は受けから始まりますが、格闘技の試合では、先手が有利な場合が多いのです。
日本空手協会総本部師範である中達也(なか たつや)先生が、「グレート・ジャーニー・オブ・カラテ」、「大いなる遺産」のDVDシリーズの中で、沖縄の空手の先生や武道の達人の先生を訪ねて、稽古や対談をしています。沖縄拳法空手道の山城美智先生との対談の中で、空手の形には「誘い」があって、特定の場所に相手が攻撃したくなるような構え、間合い、角度をとって、相手から無意識に攻撃を引き出す話がありました。たとえ形が受けから始まったとしても、そこに相手の攻撃が来なければ受けられないわけです。形の中に誘い、受け、崩し、攻撃という戦略が練り込まれています。「空手に先手無し」には、相手からの攻撃を誘うという意味もあったのです。実に奥深い話です。
このような武道の技術を日常生活にいかに応用するか常々考える姿勢が大切で、「間合い」や「誘い」は人間関係の距離感や駆け引きにも活かせると思っています。中先生がDVDシリーズで探究した内容をまとめた「中達也が行く!空手道の発見」を読むと、中先生の飽くなき探究心と武道の奥深さを改めて感じることができました。
書籍名 | 中達也が行く!空手道の発見 |
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著者 | 中達也 |
出版社 | BABジャパン |
価格 | 1,650円 |
概要 | 気づいた時には当たっている あの「追い突き」も、型から生まれた!若き頃より競技空手で実績を積み、最高の「極め」を求める武道空手で道に至る。伝統の型に学び、古武術や中国武術、ボクシングなどからヒントを得て、一生向上できる空手を見出す!超達人テクニックに明るい人柄、端正な佇まいも備えた空手界のスター、初の著書を出版!! |
ISBN | 9784814204755 |