ぶくぶくコラム

2024.10.5 第366号

熊本市 H・K様

雑草のような生き方


 私は、世の中で流行っていることにあまり関心がなく、人が興味を示さないようなことに、つい興味を持ってしまうところがあります。 そこで、「競争「しない」戦略」という本を紹介します。著者の稲垣栄洋先生は、静岡大学農学部教授で雑草生態学が専門の農学博士です。植物がどのような戦略で生き残っているかについて書かれた本です。

 SMAPの「世界に一つだけの花」という歌の中に、「ナンバーワンにならなくてもいい、もともと特別なオンリーワン」という歌詞があります。生物の世界では、どちらを目指すのが正解でしょうか。生物の世界では、「ナンバーワンしか生き残れない」というのが正解です。ナンバーワンしか生き残れないのに、なぜ多様な生物が存在するのか。それは、ナンバーワンになれるオンリーワンの場所を持っているからです。この「ナンバーワンになれるオンリーワンの場所」を生物学では「ニッチ」と呼びます。他の生物とニッチをずらしながら、さらにニッチの範囲を狭くすることで、実に多くの生物が存在しています。この考えは、生物に限らず、ビジネスの世界でも大いに役立つ考えです。つまり、ナンバーワンになれるオンリーワンの分野で商売をするという戦略です。稲垣先生が書かれた多くの著書でも、「ニッチ」の話が紹介されています。他にも、雑草には強いイメージがありますが、踏まれてもあえて起き上がらず無理に戦わない戦略もあります。

 私事で大変恐縮ですが、事情があって以前の勤務先を50歳の頃に退職しましたが、「ニッチ」な専門分野のおかげで、5年のブランクがあったにも関わらず、55歳になって以前と同じ職業に再就職することができました。これまでの自分の人生を振り返ってみると、仕事や趣味においてライバルが少ない「ニッチ」な分野を無意識に選んで、あえて戦わずに生きてきたように思います。この本を読んで、まさに「雑草」のような生き方そのもののように思いました。


書籍名 競争「しない」戦略
著者 稲垣栄洋
出版社 扶桑社
価格 990円
概要 雑草は実は強い植物ではない。ではなぜ弱い植物がはびこることができるのか。 逆境を味方につけ、予測不能な変化を受け入れる。弱者の戦略は、ビジネスにも、生き方にも通ずる
ISBN 9784594092016