版元さんリレーエッセイ

　風媒社は名古屋にある出版社です。東海地方を中心に郷土史や人文・社会科学ジャンルの書籍を刊行しています。

　最近は、全国各地の古地図を読み解き、いまにつながる土地の記憶を掘り起こす歴史ガイドブック「古地図で楽しむシリーズ」や、「昭和100年」にあわせて関連した郷土本を多く刊行しています。

　小さい出版社とはいえ定期的に本を刊行し続けていますと、在庫点数もそれなりの数になります。本の出荷、在庫の管理は自社で行っていますが、ほぼ担当者一人で在庫の棚を管理しているため、担当者以外は正確な場所がわからない本もあります。

　もちろん在庫表もあり、「A5判ハードカバーはここ」「ガイドブックはここ」と本のサイズごとやジャンルごとに分けてはありますが、売れ筋など日々の出荷量によっては型通りの棚にあっては非効率と、担当者の感覚であっちにあったり、こっちにあったり。

私も昨年まで出荷を担当していましたが、次々と出来上がってくる新刊、日々の出荷業務の流れの中で担当者独特のクセのある棚が出来上がっていきます。

　書店さんを訪問した際は、どのような本が置いてあるのか棚を見せていただきます。こちらでも独特で個性的な棚に出合うことがあります。

　本には『古地図で楽しむ長崎』（大平晃久 編著）のように歴史もしくは郷土史の棚にスッと落ち着くものもあれば、脊髄性筋萎縮症と診断され、寝たきりの生活を送りながらも社長業を営む著者のエッセイ『寝たきり社長の上を向いて』（佐藤仙務 著）のように「社長」からビジネス、「障害」から医療、福祉にと複数のジャンルをまたぐものもあります。

　無数にある本、ジャンルを越える本の中から書店員さんが厳選された棚からは、思いがけない本との出合いや、新しい企画のヒントを得る機会をいただくことが多々あります。

棚をゆっくりと眺めることもオンラインにはない、リアルならではの書店さんの楽しみ方の一つですね。

【新家淑鎌様プロフィール】

風媒社営業部。1981年、愛知県生まれ。入社後は営業、出荷業務に携わってきたが、数年前より編集も担当。趣味は庭木の世話、土いじり。

＊編集長より：新家様素敵なエッセイをありがとうございます。名古屋にはあまりご縁がないのですが、いつかお訪ねしたいと思います！