特集

2024.3.5 第359号

御影店16年ありがとうございます

神戸御影店 店長 室田大祐

早いもので神戸に来て4年半が経ちました。その割にこの街についてほとんど知らないことに気まずい思いが隠せない自分がいます。

 僕の最初の神戸との出会いは高校生の頃に読んだ西村しのぶの「サードガール」というコミックでした。ストーリーも相まってとにかくおしゃれな街というイメージで、こちらに来てみて神戸の人が関西弁をしゃべるということに軽い驚きを覚えたものです。悪い意味ではないので気を悪くした方がいらっしゃったらすみません。

 去年の秋口くらいに双葉社さんより神戸を舞台にした小説が出るというお話を伺いました。「レぺゼン母」で話題となった、神戸市出身で現在は和歌山県にお住いの宇野碧さんの作品です。本の内容は神戸が舞台の短編ということが共通しているだけで、作風が全く違う話が並んでいて、宇野碧さんの作品は初めて読みましたが掴みどころのない作家さんという印象を受けました。悪い意味ではないので~(2回目) 北野の異人館、神戸大学(作中では街の名を冠した大学となっている)、メリケンパーク、ポートアイランドなど、こんな僕でも耳なじみのある地名や名称が出てくると作品の世界がより身近になり、現実と物語の境界が無くなっていくように感じられました。 

 ご当地小説がジャンルといって良いのか分かりませんが、自分の知っている街が舞台というだけで読みたくなってしまう魔力を持っています。3月21日に「繭の中の街」というタイトルで発売されますので、気になった方はぜひ読んでみてください。

書籍名 繭の中の街
著者 宇野 碧
出版社 双葉社
価格 1,870円
概要 歴史の中で多くの出会いを見届けてきた神戸の街を舞台に、様々な形の出会いと別れを描く傑作短編集。ある時は運命的な男女の出会いを、ある時は破滅的でさえある恋を、またある時はパラレルに存在する神戸での不思議な邂逅を描く。読後感も、時にはジャンルさえも全く異なる独立した物語である一方で、それらは確かな繋がりを持ち、それぞれに響き合って作品世界を美しく彩る。読み終わった後、必ず誰かと語り合い、分かち合いたくなるような魅力に溢れた1冊。
ISBN 9784575247190

もう1冊ご当地小説を紹介させてください。昨年発売されるとブランチなどでも紹介されて話題となった「成瀬は天下を取りにいく」です。

 皆さんは「膳所」という地名をご存知でしょうか?まず初見ではなかなか読めないと思いますが、こちらは「ぜぜ」と読みます。場所は琵琶湖を望む滋賀県は大津市で、この町を舞台に幼いころから勉強もスポーツも何でもこなすが、奇妙な言動が多いがゆえに周りから浮いてしまっている女子高校生成瀬あかりと、自分は凡人であると自己評価低めの友人島崎みゆきが、高校3年の夏を2020年8月に閉店した西武大津店に捧げたり、漫才のコンビを組んでM-1グランプリに出場するために奮闘したりする連作短編集です。

 主人公の成瀬あかりの一本筋の通った性格と、周りから理解されなくても気にせず突き進んで行く様子が可笑しく、さらに成瀬あかりを取り巻く人たちの心理描写も丁寧に織り交ぜていくストーリーは今作がデビュー作とは思えません。「成瀬は天下を取りにいく」は今年の本屋大賞にノミネートされていて、さらに続編が1月に発売されたばかりで、こちらもさらに面白くなっていました。僕個人的には続編のほうが好きです。本屋大賞の発表は4月10日です。今年はどの作品が大賞に選ばれるのか発表が楽しみです。

書籍名 成瀬は天下を取りにいく
著者 宮島未奈,
出版社 新潮社
価格 1,705円
概要 「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。各界から絶賛の声続々、いまだかつてない青春小説! 中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。コロナ禍、閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。さらにはM-1に挑み、実験のため坊主頭にし、二百歳まで生きると堂々宣言。今日も全力で我が道を突き進む成瀬から、誰もが目を離せない! 話題沸騰、圧巻のデビュー作。
ISBN 9784103549512

最後になりましたが、メトロ書店神戸御影店16年間のご愛顧ありがとうございます。引き続き、ご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。