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今月のメトロニュース
2019.1.5発行 No.295  
特集 版元さんリレーエッセイ ぶくぶくコラム 次に来るのはこの一冊!

版元さんリレーエッセイ

学研プラス セールスプロモーション部 販売促進室 笹生 篤様

私に本の楽しさを教えてくれたのは、母だった。
 実家は横浜の西部地区にあって、山を切り開いて建てられたいわゆるニュータウンの団地だった。近所の道をよくタヌキやヘビが行き交い、学校の裏山にはイノシシが出て危ないので立ち入り禁止のテープが張られていた。家の目の前には田んぼと畑があり、夏も終わりに近づくと、スズメ脅し用の爆音機から放たれる「ドーン」という音が家の中まで鳴り響いた。横浜といっても土地によって風景は様々だ。
父はオーディオメーカーに勤務する会社員で、母は看護師という両親共働きの家庭だった。兄弟は3つ上の兄がひとりいた。母は当時、週6日の勤務で帰りは遅く、そのうえ家事もしなければならなかったのでいつも忙しくしていたのを覚えている。小学生の私にとってそれは日常だったし、近所に友だちもたくさんいたので寂しいと感じたことはなかったが、母なりに思うところがあったようだ。子どもたちとのつながりを増やそうと母は考え、私たちが遊びに出かけている休日の空いた時間を見つけて、読み聞かせ用の朗読テープを自宅で作り始めた。本のタイトルは、吉本直志郎作の青葉学園物語(ポプラ社)という児童文学で、戦争孤児の少年たちが仲間たちと一緒に明るく日々を生き抜いていく全6巻の長編物語。テープの数はどんどん増えていった。兄と一緒に、毎晩寝る準備をしてからそのテープを聞いた。物語の楽しさもさることながら、演劇部出身の母の朗読は、登場人物を見事に演じ分けていて、僕ら兄弟は夢中になってテープを繰り返し聞いた。私は物語の楽しさを知り、本をよく読むようになった。
あの時、なぜ朗読テープを作ろうと思ったのかを母に尋ねると、母も祖母に読み聞かせをしてもらったからだそうだ。子どもの頃の読み聞かせは、深く子どもの心に残る。今でも母の声と物語の細かなシーンを思い出せる。時折聞こえるスズメ脅しの音とともに。

【プロフィール】

神奈川県横浜市出身。1979年生まれ。2003年学習研究社(現学研プラス)に入社。広告、受託事業などの営業を担当。2018年10月から九州エリアの営業担当へ。休日は友人たちと米作り。


 
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