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2011.11/5発行 No.209  
特集 版元さんリレーエッセイ ぶくぶくコラム ステンドグラス

特集
村上春樹の短編小説

 ずいぶんと肌寒い季節になってきましたね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
 さて、先日惜しくもノーベル文学賞を逃してしまった村上春樹さんですが、今回は彼の短編集についていくつかフィーチャーしていきたいと思います。
 私は彼の短編小説こそが本当の村上春樹の真骨頂だと思っています。(独断と偏見で勝手なことを言ってしまってすみません……)
 村上春樹といえば、一見普通に見えてどこか不思議で独特の世界観を持った「村上ワールド」で有名ですが、彼の魅力を思う存分に堪能できるのは彼の短編小説にあると思うのです。

 まず、最初に紹介するのは『レキシントンの幽霊』(文藝春秋、480円)。古い屋敷で留守番する「僕」がある夜に見た、いや見なかったものはいったい何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか…。次々に繰り広げられる不思議で楽しく、そして底無しの恐怖を感じさせる短編7編が収録されています。全体を通してどこか「孤独感」の色が強い短編集になっています。

 次に紹介するのは『東京奇譚集』(新潮社 、420円)。肉親の失踪や理不尽な死別、名前の忘却。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る短編5編収録になっています。
 不可思議な出来事を集めたきわめて小説らしい小説だと思います。現実に起こりうるかもしれないことを小説にしたということで、村上春樹のその他の長編小説にはない面白さにあふれています。この中でも私は特に最後の作品の「品川猿」という話が好きで、ストーリーの圧倒的な展開に驚かされました。

 3つめに紹介するのは『カンガルー日和』(講談社、470円)。時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げる村上ワールド。ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむのです。
 この短編集は1話ずつがすごく短くて、ちょっと空いた時間や電車の中でも気軽に読める短編集になっています。淡々とした語り口が、なんともたまらない作品です。

 そして最後に紹介するのが『回転木馬のデッド・ヒート』(講談社、420円)。奇妙な空間、それは「都会」。そこで暮らす人々の人生をたとえるなら、それはメリー・ゴーランドのよう。人はメリー・ゴーランドに乗って、日々デッド・ヒートを繰りひろげる。人生に疲れた人、何かに立ち向かっている人……、さまざまな人間群像を描いたスケッチブックの中に、あなたに似た人はいませんか?
 この中の作品は村上春樹が知り合った人々から聞いて話をまとめた短編集と言われています。全部で8編収録されていて、そのうちの2つは作者自身の体験談だそうです。どの話も、すごく現実にありそうな雰囲気です。
 このように、村上春樹の短編集には、普通に見えて普通ではない日常生活がすらすらと表れています。彼の短編小説からはどんな所にでもドラマがあるんだとつくづく感じさせられます。

 皆さんもぜひこの独特の「村上ワールド」を、まず短編小説から楽しんでみてはいかがでしょうか。 (神戸御影店 馬場 崇)

レキシントンの幽霊
東京奇譚集
カンガルー日和
回転木馬のデッド・ヒート
『レキシントンの幽霊』
 
『東京奇譚集』
 
『カンガルー日和』
 
『回転木馬のデッド・ヒート』
文藝春秋
 
新潮社
 
講談社
 
講談社
\480
 
\420
 
\470
 
\420
             



 
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