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2011.8/5発行 No.206  
特集 版元さんリレーエッセイ ぶくぶくコラム 編集後記

特集
夏文庫と読書感想文

 この季節になると、店頭に並ぶのが、夏の文庫フェアだ。夏休みの課題で、学生の頃に読書感想文を書かされたのを思い出す。クラスメイトは、みんないやいや書いていたが、何故か僕は、ウキウキして、大好きな太宰治や芥川について、原稿用紙を規定の倍以上書いていた。が、内容が中学生らしくないということで、先生に職員室に呼ばれていたのを今でもハッキリ覚えてる。その時先生によく言われたのは「何かつらいことでもあるのか?」とか「何でも先生に言うんだぞ」などだった。こう書くとイジメにでもあっていたのかと思われるかもしれないが、実はそうではない。
  中学一年の時に友人の影響で洋楽にハマッていた僕がよく聴いていたのは、ドアーズ、セックスピストルズ、ジミヘン、クイーンなど。もちろんリアルタイムで聴いていたわけではないが(そんな歳ではない)友人に勧められてよく聴いていた。これらのアーティストに共通しているのが、バンドの中心メンバーが急死、もしくは変死している点だ。今に残る素晴らしい音楽を作った人の多くが夭折していることに対して、妙に多感だった当時の僕は、カリスマを感じずにはいられなかったんだと思う。その流れで悪友に勧められたのが、太宰治や芥川龍之介だったのだ。ただでさえ多感な時期で、さらにハマリやすい僕は、太宰や芥川を貪り読んでいた。そんな僕が、夏休みの読書感想文で延々と太宰や芥川を、本の内容そのものよりもそんなところをクローズアップして書いていたら、そりゃ先生も心配するだろう。僕の先生は、今思えばすごく熱心な先生で、職員室に呼ぶばかりか親にまで連絡していたから、当時はなんとおせっかいな先生だと思っていた。
  前置きが長くなったが、僕の大好きな芥川作品と太宰作品について書こう。
  まず、芥川と言えば『羅生門』や『トロッコ』が有名だが、僕が特に好きなのは『地獄変』や『蜘蛛の糸』だ。前者は、説話集『宇治拾遺物語』が基になっていて、主人公良秀の、芸術を完成させるための狂気じみた執念が衝撃的だ。後者は、芥川が初めて手掛けた児童文学作品で、今年10月に映画化されることになっている。監督は、太宰治の『斜陽』なども手掛けた秋原正俊監督だから、今から非常に楽しみである。その他、晩年の代表作『河童』なども、比較的読みやすくてお勧めだ。芥川の命日は、この作品にちなんで「河童忌」と呼ばれている。

羅生門/鼻/芋粥
地獄変/邪宗門/好色/薮の中 他七篇
蜘蛛の糸/杜子春/トロッコ 他十七篇
河童
『羅生門/鼻/芋粥』
 
『地獄変/邪宗門/好色/薮の中 他七篇』
 
『蜘蛛の糸/杜子春/トロッコ 他十七篇』
 
『河童』
角川グループパブリッシング
 
岩波書店
 
岩波書店
 
集英社
\380
 
\630
 
\693
 
\360

  次に、太宰と言えば『人間失格』や『走れメロス』、最近では、映像化された『ヴィヨンの妻』などが有名だが、初期の作品は一人称で、自堕落で女性好きな主人公が破滅していく傾向が多いのが特徴だ。個人的には、タイトルから晩年の作品と思われがちな処女短編集『晩年』や、未完の遺作で意味深なタイトル『グッド・バイ』、女性読者から送られてきた日記をもとにして、女性目線で書かれた『女生徒』などもお勧めしたい。
  暗い印象の作品が多いような太宰作品の中でも、僕の好きな作品は『パンドラの匣』と『津軽』だ。前者は、結核治療で入院している少年が友人に宛てた手紙形式で、心のリアルな動きを表現している一人称の語り口が読んでいて気持ち良い。後者は、こちらも一人称なのだが、主人公の津軽の旅日記のような、半分エッセイみたいな作品で、どこに行っても主人公が酒を飲んで、蟹や美味しい物を食べている。読んでいると、こんな旅をしてみたいとつくづく思う。

斜陽/パンドラの匣
人間失格
走れメロス
ヴィヨンの妻
『斜陽/パンドラの匣』
 
『人間失格』
 
『走れメロス』
 
『ヴィヨンの妻』
文藝春秋
 
集英社
 
新潮社
 
新潮社
\410
 
\270
 
\420
 
\380
晩年
グッド・バイ
女生徒
津軽
『晩年』
 
『グッド・バイ』
 
『女生徒』
 
『津軽』
角川グループパブリッシング
 
新潮社
 
角川グループパブリッシング
 
岩波書店
\540
 
\540
 
\460
 
\630

  最後に、太宰作品は、書き出しと締めくくりが何ともかっこよく、特に締めくくりは、作品を最後まで読むことによって分かる味わいがあるのだが、一つだけ、私の好きなフレーズを紹介しておこう。『津軽』のラストだ。

絶望するな。では失敬

  では、失敬。    
(博多店 寒川大輔)



 
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