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今月のメトロニュース
2009.8/5発行 No.182  
特集 版元さんリレーエッセイぶくぶくコラムステンドグラス

ぶくぶくコラム
『パブリッシングリンク S様』
  このところ村上春樹の『1Q84』に話題が集中していますね。私も入手し千ページを一気呵成に読破しました。
  結論からいえば、著者渾身の力作です。私の個人的感想は、読後感の味は決して良いものではありませんでした。私は村上春樹のベスト作品を「海辺のカフカ」次点が「国境の南、太陽の西」と、普通の読者と少し異なった嗜好のハルキストであります。つまり、軽やかで、エロティックで、それでいて不条理の趣きが好きなのです。
  今作「1Q84」は問題作と捉えると、もしかしたら読みちがえるかも知れません。今作は「悲恋」物語として読むと、ずいぶんと腑に落ちます。今や、ハルキは世界のハルキであり、川端、三島を遥かに越えて世界の読者を虜にしています。
  私の独断的意見では、ジョン・アーヴィングと村上春樹の2人が世界を席巻するモダンノベルの雄だと思っています。この2人のうち、どちらが上か、と問われればハルキかなぁとも思います。なぜならば、ハルキは英米文学の翻訳を多く成し遂げていて、そのことが作品に良い意味で活かされているのです。即ち、視野が広く、人間注視の面で普遍性があり、更には物語の構築に意外性があるのです。小説の面白さ、可能性の展望を考えるとき、右の2人の作家には、底知れないポテンシャルを感じます。
  「海辺のカフカ」は日本では、さほど大ブレークには至りませんでしたが、海外はこの作品でした。ロシア、中国、イタリア、英米などの若い読者達には、3年前、爆発的に広がりました。
  日本において、今作は『ノルウェイの森』(講談社、540円)以来の爆発です。
  これから数年後、かつて「カフカ」で爆発した海外の読者が訳出された「1Q84」をどのように読むのか。それが大いに興味がもたれるところであります。
  日本の読書界では、これまでのハルキ作品においては「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」がベスト作品との風評が定着しておりました。そして、今作「1Q84」がそれを凌駕した、と言われることになりましょう。ずいぶん大げさなことを言っているように思われるかも知れませんが、ハルキがイスラエルに招聘されて講演をした、という事実をもってしても、我々日本人が考えているよりずっと世界的に注目されているようです。当然の事として、今年の秋の、あるいは次の年のノーベル文学賞には最短距離にいる作家なのであります。
  私たちは「1Q84」を売りながら、買いながら、読みながら著者に最も近しい当事者として、悦びを感じ誇りをもっていてよろしいのではないでしょうか?
  川端も大江もノーベル文学賞受賞作家ではありますが、どこか釈然としないところがあります。川端は「そろそろ日本にも…では、日本のペンクラブとしては三島以前に重鎮の、そして日本的作品の創出者である作家を」大江は「徹頭徹尾、核の被爆を訴えた作家として必然的な受賞者」なのであります。しかしハルキは、本来のノーベル文学賞の本質である、文学の普遍的創造者という資格は充分にあるのだ、と思います。


『1Q84』(1・2)
(村上春樹、新潮社、各1890円)

1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。
そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。
そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。
私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。
1Q84


パブリッシングリンク S様

 
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