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メトロニュースバックナンバー2009
2009.3/5発行 No.177  
特集 版元さんリレーエッセイ ぶくぶくコラム

ぶくぶくコラム
「長崎市 M様」
『イギリス型(豊かさ)の真実』
(講談社、林信吾、¥756)

 イギリスでは医療費がだれでも無料、と聞けばにわかに信じがたいことではあるだろう。
 けれども、この国には昔から、「ゆりかごから墓場まで」という言葉があった。(今ではなんだか懐かしさが感じられる言葉であろうか)このイギリスの社会福祉の代名詞ともなった言葉の実態は現在どうなっているのか。
 この著は、イギリスに在住しジャーナリストとして生活した著者の、医療や福祉、若者事情や高齢化に伴う年金問題などの実情にふれた体験談と分析、また日本の現状に対する堤言といった内容のものとなっている。中でも関心を引かれたのは、イギリスの医療がなぜ無料となっているのかということである。(実際には、薬代などの自己負担はあるようだが)著者は、その歴史的な背景の経緯をたどりながら、いわゆるナショナル・ヘルスサービス(NHS)の仕組みと実態を紹介している。
 なぜ、そのようなことが可能となったか。そこにはイギリスの戦後史の中で社会的主義な政策を労働党が採用したという経緯も作用しているようだ。ただ、現在その制度を支えているものは結局、「高福祉高負担」というものである。イギリスの消費税(付加価値税)は、なんと17.5%である。いわゆる先進国の中で日本の消費税は最も低いことはよく知られていよう。ただ、この消費税、一律になんでもというわけではなく、日用品などにかかる消費税は低く抑えられている。
 言うまでもなく、現在、日本でも麻生首相の発言以来、物議をかもしているのだが、高度消費資本主義と言われる段階にきているとすれば、5%ではやっていけない話ではないだろうか。要はそのあり方と使途であるようにわたしなんかは思うのだが。
 この医療面ばかりでなく、若者事情についてもふれてあるが、もう一つ個人的に興味深かったのは、第三章「低福祉・低負担ニッポン」の章であった。有給休暇が年4週間は認められ(実際に実施され)夏期になると多くの人が2・3週間のホリデーをとっているという実態である。
 などと書いてくれば、うらやましい国イギリスとなるのだが、そこはそうとも言えない実態も。なにしろイギリスは未だに階級社会である。そこから生まれてくる厳しい現実もまた知らされることになる。とは言え、移民をいろいろな国から受け入れ、国籍をとれば国民として同等に権利も保障もしてくれる国もまたないのだ。(その実態をもっと体験談風に書かれたものに高尾慶子氏のエッセイものがあるが、興味のある向きにはそれをお奨めします。)
 ともあれ、この著は実体験からする考察となっていて、実感的であるし、専門家の著ではないから肩がこらず、読みやすい。

 
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