「今年も吉田修一から目が離せない」
 
 吉田修一の熱烈なファンである娘から「この人そのうち賞を取るよ。読んでみてご覧」と、紹介されたのはかれこれ10年ほど前になる。
 その後、1997年『最後の息子』(文藝春秋)で文学界新人賞、2002年『パレード』(幻冬舎)で第15回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同年の第127回芥川賞を『パークライフ』(文藝春秋)で本当に取ってしまった。その後『7月24日通り』(新潮社)は映画化され、『WATER』(※『最後の息子』に同時収録)では始めての映画監督もしている。
 初期の作品は今どきの若い人らしく、ちょっとおしゃれで爽やかな感じだったが『長崎乱楽坂』(新潮社)あたりから、この人凄いな、何でも書けそうで楽しみだと思うようになった。
 昨年、朝日新聞で連載されていた『悪人』(朝日新聞社)が出版されたが、これは様々な登場人物や場所をからめて交差し合う人間像を描き出した小説になっている。「登場人物が勝手に動き出した」と著者がTV出演の際に言っていたように、今までとは違う何かが吉田修一の中に降りてきたように感じる。人間を観察する眼の確かさ、緻密さ丁寧さ、そして温かさ。人間臭い吉田修一の新たな作品が待ち遠しい。

 
メトロ書店専務 川崎紀子
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