「第一回大江健三郎公開対談を聴いて」
 
 

先日、『第一回大江健三郎賞公開対談』に行く機会を頂いた。
記念すべき第一回の受賞作は長嶋有『夕子ちゃんの近道』(新潮社、¥1575)で、昨年一年間に刊行された全ての作品を選考対象とし、大江氏自らが全作品を読んで選考したものだ。
対談は終始、長嶋氏がよく話し、自分で言ったことに自分でツッコミを入れる等、「文学」と聞くと思い浮かぶ堅苦しいイメージとはかけ離れたものだった。「受賞が決まったと聞いた時『僕、大江さんの作品なんて一つも読んだことないけどいいのかな?でも賞は欲しいからくれ』と思った。」なんて言い出し、会場は何度も爆笑の渦になった。
「面白い話」をする人はたくさんいるのに、話している本人は面白さに気づいていなかったり、それを小説に書く人がおらず、長嶋氏はそれを書きたいと思ったそうだ。
自らの視点や感覚を『善い』と自信を持って発信し、それを世代や性別を超えた人々に認めさせる力が自分と同世代の人から感じられ、心から感動した。文学の世界は、その力を発揮することが可能な、壮絶でいて、夢のある世界だ。『小説』という世界に『リアル』を感じるのはだからかもしれない。
正しい『言葉の使い方』を持っていなくては文学・文化は廃れていく。文学・文化の明るい未来のためにも、書店の持つ役割は本当に重大だと思うし、そこにほんの少しでも自分が関われていることを嬉しく思った。

 
メトロ書店 井上 香枝
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