「早川書房 TH様」
 

 3歳の子供を誘拐し、火をつけて重傷を負わせた6歳の少女・シーラ。彼女は4才の時に母親に捨てられ、刑務所に出たり入ったりしていた父親のもとで日々あらゆる虐待を受けながら育った子供でした。今日紹介させていただく『シーラという子』(入江真佐子訳、早川書房、¥760)は、そんなシーラと、筆者である特殊学級の教師トリイ・ヘイデンの、5カ月にわたる心の交流の記録です。
  貧困、暴力、性的虐待という、シーラが背負ってきた過酷な現実。小さな体と心に大きな傷を負っていたシーラは当初、垢にまみれ、手がつけられないほど凶暴で、言葉を喋ろうとも泣こうともしません。いくつもの施設をたらい回しにされた果てに、トリイのもとへやってきます。本書が出た当時私はこれが本当にあった話とは信じられず(「児童虐待」という言葉さえ一般的なものではありませんでした)、アメリカとは何とすさんだ国だろうとショックを受けたものですが、昨今では日本でもこうした事件を耳にする機会が多くなりました。
  3児の父親である私にとってとりわけ心に沁みたのは、冷たく凍ったシーラの心を、トリイが少しずつ溶かしていく過程です。トリイの目線はどこまでも子供に寄り添っています。シーラのわずかな心の動きも見逃さない注意深さと、あくまでも気長に情況を見守る大らかさ、そして自分に非があれば素直に認めて謝る潔さを併せもったトリイ。言うことを聞かない子供たちに日々イライラしどおしだった当時、少しでもトリイに近づきたい、と思いながら本書を読んだものでした。自社本の販売促進という仕事を超えて出会った、私の大切な一冊です。
  「児童虐待」という重いテーマを扱った作品ですが、互いに相手を信じようと決心し、立ち上がるシーラとトリイの姿はとても美しく、励まされます。子供たちをめぐる心痛ましい事件が相次ぐ今日こそ、改めて読み直す価値がある作品だと思います。皆さんもシーラの、そしてトリイのまっすぐな心に触れてみませんか?

 
TH様プロフィール
昭和38年生まれ43歳。
早川書房に入社して販売促進一筋20年。子供たちの親離れがチョットさみしいと感じる今日この頃です。
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