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ブクブクコラム
 
このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
ヨーロッパへ行きたしと思へども
長崎市 M.K.様
『夫婦で歩き描いた ヨーロッパ縦断4000キロ』 (山浦正昭、新評論)
詩人萩原朔太郎は「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」(旅上)と詩に書きつけた。もちろん現在は、行きたいと思えば行けないことはない。ただ、それは物心両面でのさまざまなハードルをクリアできればの話。気持ちだけは人一倍ありながら(なにしろ愛視聴番組はBS1の「世界街角散歩」だったりする)、わたしなんぞ一度もヨーロッパに行ったことがないのであります。どうして?と自問するばかり。いつかきっと、と心に誓ったり・・。(そんなに意気がることでもないか)。

ところで、この本の著者夫婦、なんと五十歳から十年がかりで、デンマークからドイツ〜スイス〜フランスと、ヨーロッパを徒歩で縦断しているのですね。徒歩で!10キロ以上もある荷物を背負い、毎夏20日前後の日数をかけて、前年辿り着いた地点から次なる地点まで、と。むろん、普通の夫婦がこんな芸当はできません。

著者の山浦氏はこれまで日本ユースホステル協会に所属し、青少年の旅の指導にあたってこられた経歴を持ち、現在はカントリーウォークの普及、指導に尽力しておられる。なるほど、これでナットクでしょう?そうでなくては、ちょっとわたしなんかが真似のできるわざではとてもありません。なにしろ例えば「初日から三十キロメートルの長丁場。川沿いの歩くコースを八時間歩いて、ようやく初日の目的地であるバート・ヘレンアルプへ到着した。・・」(P127)てな調子ですからねぇ。散歩くらいならわたしも趣味と言いたいところですが、これじゃ最近はやりのウォーキングどころではない。

しかし、考えてみれば、徒歩による旅とは芭蕉を思い出すまでもなく、それは旅の原点ですね。旅とは物見優山にしろ巡礼行にしろ、がんらい歩いてするものでした。それが現在、歩く旅なんて考えられもしない。それはまあ仕方のないことですが、ここで旅の原点を振り返ってみてもいいのではないでしょうか。とは言っても、わたしにはやっぱり、精々が汽車の旅くらいがいいようなのですが・・。閑話休題。

著者たち夫婦はもちろんこの本の中で、旅の途中でのさまざまな人々との出逢いや、また思いがけない出来事との遭遇などをつづってくれていて、読んでいてそれなりに非常に興味深く、うらやましく、かつ楽しいものでありました。なにしろ憧れの、ふだん着のヨーロッパの姿がそこには見られるのですから。

以前、地元長崎の旅の達人・森草一郎氏のご本『中高年の旅行術』を読んだことがあります。こちらもたいへんにうらやましい内容のものでしたが、そのかかった費用の数字を見ていっぺんにヘコんでしまったことがありました。この本『夫婦で・・』もなかなかわたしには現実化できそうな旅のシロモノではないようなのですが、せめてわたしも著者たちにならって、その充実したヨーロッパのユースホステルを利用した旅(ではなくてやっぱり旅行?)がしてみたいと思ったしだい。
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