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このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
文庫の活字にモノ申す!? 
長崎市 F・K様
新聞広告で吉本隆明の「読書の方法」の文庫新刊を知り書店へ行く。新刊コーナーの平台に、一冊だけ残っているのを発見し中身を見ずに買う。ついでに隣に並べてあった「古美術読本1 陶磁」(井上靖)も買う。帰宅し、読みだして失望。

内容ではない。活字のうすさ、読みにくさ。さながら一時代前の文庫本のごとし。同じ知恵の森文庫ながら、「陶磁」のほうはちゃんとした印刷だが、「読書の方法」はどうしたことか読みにくい、と感じるほどに活字がうすい。最近の文庫本は各社とも、活字は大きくなり、印刷も鮮明でハードカバー本と遜色ない。新潮文庫などは、読みやすさをわざわざ帯で宣伝するほどの力の入れようだ。そういう時代にこの知恵の森文庫の出来はお粗末。察するに、書名、人名を太字にしたため、肝心の本文の字体が薄くなったものと思う。一緒に購入した「陶磁」のほうはそんなことはないから、「読書の方法」だけがたまたま欠陥本になったのだろう。読者にも失礼だが、なにより原作者に失礼かと思う。

手持ちの古い文庫本は愛着もあり手放すのはもったいないと思うが、いざ再読となると、活字の小さいのと、印刷字体のかすれと頁紙の黄ばみが読む意欲をそぐ。中公文庫の「日本の歴史」26巻を再読しようとしたときに、新版がでた。真っ白い頁、大きな活字、鮮明な字体、加齢で劣化した視力には、両者の読みやすさ読みにくさは歴然。我慢して古い本体を読むか、一冊千円余りを奮発して快適さを買うか、大いに悩む。それほどに印刷の鮮明度や活字の大小には神経を使う。いや使わざるを得ない年令なのだ。

そこへ新本にもかかわらず、古い印刷状態のものが現れると愕然とする。他社が客のどこに焦点を合わせて営業に力を入れているかを知らないのか、と言いたくなる。調べもせずに買ったお前がわるい、と言われればそれまでだが、文庫本の傾向というか、時代の流れに逆光する現物に接し、編集者に文句の一つも言いたいだけ。
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