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ブクブクコラム ステンドグラス


このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
 
<家族と本シリーズ 1> 
 
祖父の嘘
                                                            本紙編集長 鈴木綾子

 小学生の頃、祖父の部屋に泊まりにいくと、必ず寝る前に祖父がお話をしてくれた。いつも祖父のオリジナルの物語で、特にさまざまな難問を解決する子どもたちのヒーロー「がってんこぞう」のお話は面白く、私も妹もわくわくしながら聞き入ったものだ。
 そんなある晩のこと、実に面白い話を聞いた。主人公はおしゃかさま。ある日、天国の蓮の池から水底をのぞいてみると、地獄でとある罪人がうごめいているのがみえた。罪を重ねて地獄に落ちたのではあるが、彼がある日、小さな蜘蛛を踏み潰そうとして思いとどまったことを知って、おしゃかさまは慈悲をかけることにしました・・・という話。そう芥川龍之介の「蜘蛛の糸」である。
 祖父はこの話をあたかも自分が創作したかのように私たちに話し、おまけに若い頃、日曜学校で寺に集まった人たちに話して聞かせたら大喝采だったと自慢気に語っていた。私はこの話の面白さにすっかり魅了され、祖父は本当にすごいなぁと心から尊敬していた。(もちろん蜘蛛をふまないように毎日気をつけて歩いていたのは言うまでもない)
 
 年月は流れ、中学校の国語の授業の時。「ある日の事でございます。おしゃか樣は極楽の蓮池のふちを、ひとりでぶらぶら御歩きになっていらつしやいました・・・」先生の朗読を聞いているうちに、「あ?あぁーーーーっ」思わず大声で叫んでしまった。先生の方は静かに聞いていたはずの生徒が突然大声で叫びだすものだからびっくり仰天。教壇の上で腰を抜かしていらっしゃった。私は「あぁーっ」と叫びながらも、心の中では(おじいちゃん、うそついてたんだな)と合点がいき、叫び終わったあとは「そうだったのか、そうだったのか」と独り言を言いながらにやにや笑ってしまった。
 早速家に帰って、祖父を問い詰めると「自分で作ったなんて言うたかな?」とケロリとしている。私はえらい大人でも嘘をつくもんなんだな、と思った。
 
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