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ブクブクコラム
福音館書店 販売課 T・T様
  
 子どもの本の出版社に入ることになろうとは、それこそ、子どもの時には思ってもいませんでした。
 入社当初、まわりで繰り広げられる絵本についての議論に、私は劣等感を感じていました。児童文学を勉強してきたわけでもない、親が熱烈な福音館ファンで、幼い頃から読んできたわけでもない。「これからやっていけるのか」不安な気持ちがありました。
 
 しかし、絵本についての記憶が全く無いわけではありません。
まず、思い出されるのが、父が仕事から帰って来る時のこと。父が帰宅すると、私は玄関まで走って迎えに行きます。オレンジ色の白熱灯の下、たまに父が抱えている茶色い紙袋。それは決まって絵本でした。私のために買ってきてくれた絵本。嬉しくて私は飛び上がっていました。
 
 また、寝る前に「好きな本を持っておいで」と言われる時のこと。自分用の本箱から絵本を選ぶ幸せ。布団の中、弟と二人で母を挟んだ、くっついている感覚。あの感覚は今でも忘れません。
 
 けれど、そこに「絵本の内容について」の記憶はほとんどありません。(覚えているものも多少ありますが)まして、福音館の書名があったかと言われると怪しいものです。
 それでも、私にはなぜか「絵本にまつわる」記憶はあります。それが絵本の力ではないでしょうか?さらに、そこで読まれる本が、素晴らしい絵本だとしたら、その時間はかけがえのない記憶になるのではないでしょうか?
 
 営業に異動になり、3ヶ月。移動の際、都市圏から離れて暮らしている方々の家を沢山見ます。その家には絵本が届いているのだろうか。もし、届いていないのなら、駅前書店が廃業している現状で、どうやって届ければいいのか。考えさせられます。
 
 絵本は一つのツールです。確かに、作品の良し悪しはあります。しかし、それは二次的なもので、絵本が親と子どもの橋渡しになってくれればと、思います。
 
 私に出来ることは、それがもっと楽しい時間になるように、その場に良い作品を届けることかなと、そう考える今日この頃です。

プロフィール
1981年 埼玉県出身
 九州担当になりましたが、実は暑いのが苦手です。
 すでに7月で日差しが痛く、驚きました。8月はどうなることやら…。




*編集部より:T・T様ありがとうございました。来月は、NP社G担当H様の予定です。お楽しみに。

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