ブクブク・コラム メトロニュースメニューへ
今月の特集へ 版元さんリレーエッセイ
ブクブクコラム
このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
長崎市 M・K様

 『希望のニート』(二神能基、
東洋経済新報社、1575円)
 
 
「神様以外、人間は誰もが障害者である。」
 本書の中で最も印象に残ったことば。著者の二神能基氏が、イタリアで出会ったある夫婦〈日本人の夫・イタリア人の妻〉の生き方から示唆を受けて抱くようになった人間観だ。
 
 不登校、ひきこもり、フリーター、ニートなどの若者たちを受け入れ、寮で集団生活をさせながら、仕事の支援=社会との接触・人間関係の形成をはかっていくプロジェクトを二神氏は十数年にわたって実践してこられた。この間に支援してきた若者は700人を超える。政府もようやく具体的なニート対策に乗り出した現在、こうした地道な実践がこれまでになされてきたことの意義は大きい。
 
 本書の中で氏はこれまでに対応してきた若者の実例にふれながら、そこにある問題点を逐一指摘している。そうした実践を通しての氏の考えを端的に言えば、「家族をひらく」ということに帰する。戦後の核家族の歴史はわずかに三十年、今その曲がり角にきて少子化・高齢化し、核家族だけではやって行けない状況が出てきているのは確かなことだ。「家族」が社会的な支援を必要とするようになった、そういうことではないのか。

  「家族をひらく」とは、若者たちを家族に閉じ込めないで、他者と協力しもたれあいながら生きていくことの意義を認識させ、そのためのスキルを家族の外にむけて身につけさせていく機会を与えていくことを意味する。そして、それは冒頭に引用したことば「神様以外、人間は誰もが障害者である」ということばに表れた人間観につながるものでもある。イタリアのカトリック的な精神風土がその背景にあるとはいえ、近代という時代が追求してきた人間をあくまで自立的な存在を志向するものと考える人間観を反省し、互いに協力し合い助け合うところに、個人の傲慢さを超えた豊かな生き方を望みみることができるのではないかと、そうした意味のことを氏は本書で語っている。

  『希望のニート』とは、いい題名だ。若者が希望をもてる社会にしていくことは、いつの時代にも大人の責務なのだから。本書はその実践としての手がかりを与えてくれるものとなっている。

 
ブクブク・コラムではメトロ書店のお客様からの投稿をお待ちしています。テーマは「本」に関することならば自由。面白かった本、本にまつわるエピソードなど。字数は800字程度。採用された方には図書カード¥1000をさしあげます。宛先はこのメールまで。news@metrobooks.co.jp ペンネームと題名もお忘れなく!
今月のTOPへ