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ブクブクコラム ステンドグラス 編集後記

2005年11月5日号・第137号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

時代小説のスゝメ
メトロ書店浜町店店長 山口美奈子

 「ひと〜つ人の世生き血をすすり、ふた〜つ不埒な悪行三昧、みっつ醜い浮世の鬼を退治してくれよう桃太郎!」
 なつかしの桃太郎侍!若い頃の高橋英樹好きだったな〜。これは立ち回りのときのセリフなのですが、回を追うごとにセリフの間で斬る人間が増えていってるんですよね〜。桃太郎侍もよいですが、時代劇では鬼平犯科帳はやはりはずせません。中村吉右衛門扮する長谷川平蔵、多岐川祐美の久栄、うさぎの木村忠吾に尾美としのり。しかしなんといっても一番味があるのは相模の彦十の江戸屋猫八。勿論原作の鬼平犯科帳(文春文庫全24冊)もおすすめです!TVシリーズの鬼平犯科帳がお好きな方はぜひ読んでみてください。BGMはジプシーキングスで!
 鬼平犯科帳の魅力的な人物の中に奥方の久栄があげられると思いますが、時代小説の中にこの人を上回る(?)奥方を発見しました!「功名が辻」(司馬遼太郎、文春文庫全4冊)の千代。この本は2006年の大河ドラマの原作で、山内一豊とその妻千代の出世物語ですが、「功名心」はあふれんばかりにあるものの今ひとつ表舞台に立つことの出来ない一豊とその夫を支えた賢妻の物語、では終わりません。
「男というものはいくつになっても子供で、生涯、子供を育てるようなつもりで夫を育ててゆけばよい」
「妻が陽気でなければ、夫は十分な働きは出来ませぬ。夫に叱言をいうときでも、陰気な口から言えば、夫は心が萎え、男としての気おいこみを失います。同じ叱言でも陽気な心でいえば、夫の心がかえって鼓舞されるものです」
 これは千代の母・法秀尼の言葉。1巻は賢い妻の処世術が盛りだくさんです。下手なHOWTO本より役に立つかも!?

 最近のおすすめ時代小説はなんと言ってもこのシリーズ、「しゃばけ」(畠中恵、新潮社)。朝・昼・晩と違う理由で死にかけるほど病弱な若旦那と出てくるのは妖怪ばかり。妖怪、と聞くとおどろおどろしいものを想像しがちですが、この本の妖怪たちはとぼけていて憎めません。嗚呼、我が家にも鳴家(やなり)を2、3匹欲しい…。
 病弱な若旦那が妖怪の手を借りて事件を解決していく安楽椅子探偵ものですが、ミステリーとしても面白いですよ。
 現在「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」「おまけのこ」の4作があり、文庫では「しゃばけ」が発売されています。(今月月末に「ぬしさまへ」文庫発売予定)単行本を持っていても挿絵の柴田ゆうにひかれてついつい文庫まで買ってしまう一作です。
 では最後にもうひとつ軽く読めるものをご紹介します。「風流冷飯伝」(米村圭吾、新潮文庫)。この本も挿絵の柴田ゆうに惹かれて購入したのですが、一作目読んだ翌日には一気に全シリーズ集めてしまいました。風見藩を訳ありで訪れた一八と藩士の冷飯食い(次男坊)が風見藩を陥れようする陰謀に立ち向かう……話のはずなのですが、のほほんとした冷飯食いたちとお調子者の一八、奇妙奇天烈な風見藩の掟(城下町の通行は男が城を中心に左、女が右に回って通らなければならない、など)が入り混じってちっともシリアスにならない。ちなみにこのシリーズは「退屈姫君伝」「面影小町伝」「退屈姫君海を渡る」「退屈姫君恋に燃える」と続いていきます。「退屈姫君〜」は貧乏な風見藩へお嫁入りした大藩の姫君、めだか姫が主人公。じっとしていられないめだか姫が屋敷内はもとより、あちこちをはねまわります。ちなみに「退屈姫君伝」には藩の六不思議とその謎解きがあるのですが、なんとも風見藩らしいというかなんと言うか…。

 皆さんも奥がふか〜い時代小説、楽しんでみませんか?

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