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ブクブクコラム ステンドグラス 編集後記

このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
  長崎市  F・K様

 本というものは、読んでしまっても捨てるにしのびがたいもののひとつだ。初版本で将来値上がりする可能性も、などという思惑や色気などなくても、手放すにはかなりの決断がいる。いつまた再読するかも、という漠然とした予測がブレーキになる。もっとも、実用書以外はめったに再読することはないのだが、処分の決断ができない言い訳に使われ、気が付くと書棚には用済みの本がたまってゆく。
 
 ところが活字の大型化が、手持ちの古い本の処分を促進するから面白い。自分が書棚に持っているのと同じ本が、新装再販されるのを書店で発見する。表紙や帯などは新装だが中身は初版と同じ、とあとがきに説明がある。妙なもので、出版社の再販戦術が再読の初校になる。何十年も昔に読んだものを、再読するかと書棚から引っ張り出す。しかし書店で見た新版とはかなり違う。頁の黄ばみ、裏頁のすけ、一番の違いは活字、小さい。以前はなんとも思わなかった活字の大小がこたえる。新聞を比べると読みにくさ、読みやすさは歴然。加齢による視力の劣化や昔の高齢者の視力を思い、現代人は全般的に視力が弱くなったのか、とまで考える。さもなくば、大方の文庫出版社が、活字の大型化に踏み込んだ現状は説明がつかない。本の定価を星印で表示していた頃の文庫本の活字は小さい、行間はせまい。頁いっぱいに小さな活字がぎっしりつまっている。安かろう、小さかろう、詰め込もうの出版哲学が表から裏表紙までぎっしりつまっている。頼むからもう少し行間を広げて、活字を大きくして、値段は高くなってもいいから、という読者側の願いがあったのか。現代人の視力の劣化、プラス、ゆったりした行間、活字、紙質、という快適性の要求があったか。中身は同じでも「新版」は快適な読みやすさで旧版を圧倒する。
 
 同じ読むなら読みやすい新版で、と新版を購入する。書棚から旧版の本を処分する動機が生まれる。出版社の策にはまったか
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