メトロニュースメニューへ
今月の特集へ 版元さんリレーエッセイ
ステンドグラス

メトロ書店専務 川崎紀子 
「怖い本」

 少し前から気になっていたのだが、勇気がなくて(?)手に取らなかった本がある。その題名は『オニババ化する女たち』(光文社新書、720円)だ。著者の三砂ちづる氏は津田塾大学の教授で、専門はリプロダクティブヘルス(女性の保健)。副題に「女性の身体性を取り戻す」とあり、女性の体の持つエネルギーを過小評価していると、そのエネルギーの行き場所がなくなり身体的にいろいろな問題が生じるというものだ。

 本の冒頭の「はじめにオニババ化とは何か」には、昔話などに出てくる山姥や鬼婆は社会の中で適切な役割を与えられなかった独身の更年期女性が山に篭る(こもる)しかなくなり、時折エネルギーのはけ口を求めて若い男を襲ったのではないかと著者はとらえている。この冒頭の文を読んだだけでも後から繰り広げられる本の展開が想像できる。たとえば、昔は「おばあちゃん」と言うと暖かくて懐かしいほっとするような響きがあったが、最近のおばあちゃんは怖くて厳しい人が増えているようだと文中で指摘している。わが身を振り返ってみても、時々母親に成り代わって孫を叱っていることがあり、このままではそのうちにオニババと呼ばれるかもしれないと反省した。また、女性の自立が難しかった時代に育った母親たちが「結婚だけが女の人生ではない」とか「女も自分の好きな道を歩め」などと言い過ぎたせいか「負け犬、勝ち組み」などではくくれないその他大勢の一般の若い男女は、ひとりでは相手を見つけられない。背中を押してやる人がやはり必要だとも述べている。昔、となり近所に居たおせっかいおばさんや親戚の仲人好きのひとたちの影の力は大きかったと言えるだろう。結婚しない女性、また結婚年齢が遅くなって、本来女性が持っている母性としてのエネルギーのはけ口が無くなりそれが精神的身体的に色々な障害を引き出しているようだ。
 
女性が社会的にも認められ活躍するのは喜ばしいことだ。第一線で働く優秀な人たちも大勢いるが、この本では、明治、大正、昭和、平成と日本の女性たちの意識や環境の変化を追って、女性にとって本当に大事なものは何かを問いかけている。今まであまり赤裸々に語られなかった女性の身体面、保健面からの問題提起が大変新鮮に思える。  
 女性が持つエネルギーを発揮するには男性の協力なしにはできない。オニババが作られる原因は男性にもあると思う。この本は女性だけでなく男性にも読んでもらいたいものである。


今月のTOPへ