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2005年7月5日号・第133号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

本店副店長・山下顕治のひとりごと
売り手としての『思い出の本』
 書店に足しげく通う人なら誰しも「思い出の本」があることと思います。それは、幼い日に母親に読んでもらった絵本かもしれませんし、学生の頃に胸弾ませて読んだ小説かもしれません。あるいは、大切な人から贈られた詩集かもしれませんし、将来に不安を抱いていた時に一筋の道を示してくれたノンフィクションかも…と、人によって様々なものでしょう。人生の転機に読んだ本、あるいは転機を与えてくれた本というのは、たとえそれが手元を離れたとしてもずっと思い出に残るものです。ですから私もこの機会に、「我が思い出の本」を挙げてみようと思ったのですが…私がそれをやってしまうとどういうわけだか「『官能小説』というものを知ったのは…」とか、「初めて自動販売機で雑誌を買ったのは…(男の子ならわかるネタです)」というふうに、メトロニュースの記事としては大変に不適切な方向に話が転がってしまうので、やめました。そこで少し趣向を変えて、私が「書店員として、すなわち『本の売り手』として扱ってきた思い出の本」を挙げてみたいと思います。メトロ書店に入って今までの間にあったいくつかの「転機」、そのとき売っていた本。たとえ自分が読んだことがない本でも、それはとても印象に残っています。
 
 私が博多メトロ書店にスタッフ見習いとして入ったのは2002年の初冬。ちょうどその頃に刊行が始まったのが「ドラゴンボール完全版(集英社)」でした。自分たちの世代なら誰でも知っている鳥山明氏の名作まんがが、大きいサイズの豪華本として刊行される。私自身も非常に欲しかったのですが、運悪く財布の事情が苦しい時期だったので手を出せず…。次々に売れていくのを、指をくわえて見送ることしかできませんでした。1月に2巻ずつ刊行された「完全版」は、2004年の4月に、全33巻をもって完結。刊行開始当初は書店の仕事の右も左もわからなかった私ですが、完結する頃にはすっかり一人前の書店人に成長して…とはお世辞にも言えないのが非常に残念なところです。「右も左もわからない」のが、せいぜい「お箸を持つ手のほうが、右…だったと思う…」と言えるようになったくらいでしょうか…。

  そんな「毛の生えた素人」が博多店の副店長になったのが、ちょうど1年前の2004年7月。「売れる本」を見つけ出して、その在庫を確保して…という仕事に、不慣れなりに死に物狂いになっていました(今でもあいかわらず不慣れで死に物狂いなんですが)。この時期に力を入れて販売していたのが「内側から見た富士通」(城重幸、光文社)「キッパリ!」(上大岡トメ、幻冬舎)「Good Luck」(アレックス・ロビラ、ポプラ社)などでした。この3冊は全国的にベストセラーとなり、新人副店長も非常にお世話になりました。これらの本は一年経った今でも店頭を賑わしており、表紙を見るたびに当時を思い出して胃が痛く…ではなくて、胸が熱くなってしまいます。表現としては大げさかもしれませんが、私にとっての「戦友」と言ったところでしょうか。

  そして私は、今年の4月の終わりに博多店から長崎本店に異動になりました。環境の違い、店の大きさの違いにあたふたする毎日ですが、そんな中での「思い出の本in長崎第1号」が「ハッピーバースデー」(青木和雄、金の星社)です。文芸書担当のスタッフと、
「表紙もきれいだし、目立つ場所に出してみればいけるんじゃないでしょうか?」
「そうですね。それじゃあ、やってみましょうか」
 という相談をして大きく展開してみたところ、おかげさまでたくさんのお客様にお買い上げいただいております(ありがとうございます!)。こうして「思い出の本」になった本にはとても愛着が湧きますので、「ハッピーバースデー」、まだまだ頑張って展開し続けたいと思っています。また、前述の「Good Luck」の著者アレックス・ロビラ氏の新刊「Letters to Me」(ポプラ社)が、このたび発売されました。「Good Luck」が「思い出の本」だとおっしゃる方は、ぜひお読みになってください。
 この「ハッピーバースデー」「Letters to Me」が、私だけでなくお客様の「思い出の本」にもなりますように…。

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