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ステンドグラス

2005年2月5日号・第128号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

博多店山下副店長の
ひとくちサイエンスのすすめ
 世は雑学ブーム。いろんな「豆知識」「雑学」「トリビア」本が出て、売れています。誰もが「実生活には役に立たない知識」を「浅く広く」仕入れようとがんばっていますが、たまにはその「浅く」の部分を、「ちょっとだけ深く」掘り下げてみてはいかがでしょう。
 小学校の図書館で「ちょっとおもしろそう」と思って借りた昆虫図鑑や宇宙の本。あの時と同じ「なんとなく興味があったから」という軽い気持ちで、ちょっとだけ科学の世界をかじってみませんか? 家族や友達や同僚に「へぇ」と言わせるだけじゃない、自分で「ふぅむ」と唸ることができるような本を読んでみませんか? この機会に、僕が今まで読んできた「ひとくちサイエンス本」の中から、特に好奇心を刺激された本を紹介させていただきます。

「ES細胞―万能細胞への夢と禁忌―」(大朏博善著・文藝新書、¥693 )
 肉体的・遺伝的に「まったく同じ」生物を作り出す「クローン技術」。この技術が実用化されれば、誰もが最高級の松坂牛をもうイヤってくらいに食べることができる。もしも自分のクローンができたら、そいつに仕事やらせてオリジナルの自分は家でゴロゴロ…なんてこと、一度は考えたこと、ありませんか?
 夢のような技術ですが、実際にクローンを作るとなると、マンガのように簡単にはいきません。髪の毛を一本引っこ抜いてその細胞をどんどん分裂させればあ〜ら不思議。あなたがもう一人できちゃいました!…なんてことはないのです。頭髪の細胞をどれだけ上手に培養しても、そこから手が出て足が出て…とはなりません。毛の細胞がわさわさと増え続けるだけ。それじゃあ毛玉はできても、クローンはできないですね(毛が増える。それはそれで、育毛剤業界はお祭り騒ぎでしょうが)。
ところが、本書で紹介されている「ES細胞(胚性幹細胞)」と呼ばれる細胞を利用すると、話が大きく変わってきます。この細胞は、普通の体細胞と違って、筋肉の細胞や脳細胞、胃腸の細胞など、身体を構成する全ての種類の細胞に成長できるのです。クローンのみならず、「ガンで失われた胃を再生させる」「老化して萎縮した脳を蘇らせる」等の再生医療への活用も期待できる「万能細胞」。しかし、それを実用化するには技術的にも倫理的にも多くのハードルがあって…。この続きは本書にて。

「ここまでわかった宇宙の謎―宇宙望遠鏡がのぞいた深宇宙―」(二間瀬敏史著・講談社+α文庫、¥924)
 一九九〇年に打ち上げられた「ハッブル宇宙望遠鏡」。宇宙空間に浮かぶ超高性能望遠鏡がもたらした観測データなどをもとに、「宇宙の始まりは?」「宇宙の広さは?」「ブラックホールとは?」などといった宇宙論を、専門外の人にもわかりやすく解説してくれる本。ほかにも「ダークマターって何?」「タイムマシンは作れるか?」「ホーキングの宇宙論って?」「宇宙の終わりは?」などなど「ひとくちサイエンティスト」の好奇心にザクザクと突き刺さるテーマがてんこ盛りの1冊。
 初歩的?なテーマだけでなく、「閉じた宇宙と開いた宇宙」「虚数時間」「量子宇宙論」といった、「もはや物理学なんだか哲学なんだかわかりません領域」の話にも触れています。どんなに想像力を膨らませてもイメージできずに、しまいには耳と鼻の穴から煙が出そうになってしまうのですが、そういう「なんとなくわかるような気がするんだけどやっぱりよくわかりません」感もまた、未知の分野をかじってみる楽しみのひとつでしょうね。

 一冊ウン千円の、角を頭にぶつけたらタンコブどころじゃすまないような「お堅い」専門書じゃなくていいんです。単純に「専門外だけど、ちょっと科学をかじってみよう」とお思いの方。新書や実用系文庫のコーナーに行って、ぼんやりと棚に並ぶ本のタイトルを眺めてください。「ん?」と心に引っかかる単語が、きっとひとつはあるはずです。そしたらその本を手に取って、目次に目を通して、数ページ読んで…。「好奇心のアンテナ」がピクピク動いたら、さあ、レジに行きましょう。案外おいしいですよ。ひとくちサイエンス。



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