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ステンドグラス 編集後記

2004年11月5日号・第124号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

おもしろい≠裏切らない漫画家・浦沢直樹
                            本店コミック担当:保池絵美
 「この漫画貸すよ。おもしろいよ。」「ありがとう。読んでみるね。」「おもしろかったでしょ?」
「うんおもしろかった。」
 こんな簡潔なやりとりがごく自然に交わされる作品は、実はそう多くないと思う。
 絵が好きでなかったり、展開に納得できなかったり、単純に物語に飽きたり、理由はいろいろだろう。たくさんのコミックで溢れている今、そして不況で財布の紐が固く固くなっている今、自分の本棚に置く作品は、自分が本当に惚れ込んだものだけという人も少なくない。読者は、シビアな目で作品、そして作家を選んでいる。
 
 そんな中、新作を発表するたびに売れ、ずっとファンを増やし続けている作家がいる。浦沢直樹である。彼の超人気柔道漫画「YAWARA!」から、谷亮子選手が柔ちゃんと呼ばれるようになったのは有名な話である。1983年「BETA!」でデビューした彼は、その後次々に話題作を生み出す。パイナップルアーミー、YAWARA!、MASTERキートン、HAPPY!。テレビアニメ化された作品も少なくない。軍事ものからスポーツ、考古学にいたるまで、彼が描く世界は限りなく広がっている。

 「MONSTER」(小学館/全18巻)は、彼の代表作の一つである。長編サスペンスで、なおかつアダルトチルドレンや機能不全家族などの複雑な社会問題がストーリーに絡んでくるが、読み始めたら最後まで一気に読破してしまう作品。決して「楽しい」話ではないが、きちんと描かれた人物像とその物語に、深く感動する大作である。
 
 現在も大好評連載中なのは、「20世紀少年」(小学館/〜17巻)。浦沢直樹にSFを描かせたらこうなるのか!と誰もが納得するであろう。舞台は日本、主人公のケンヂたちが幼い頃作った秘密基地から全ては始まる。そこで生まれた地球滅亡のシナリオが、まさか21世紀を目前にした世界で、現実のものとなってしまうとは…。謎の男「ともだち」が企む世界征服を阻止すべく、かつての仲間たちが集結し、悪に立ち向かうという本格科学漫画である。謎が謎を呼び、奇跡がまた奇跡を生む。20世紀少年は、「悪に立ち向かう正義」を真っ正面から描いた作品である。年齢・性別を越え、あらゆる人が今後の展開を期待する漫画だ。

 そして、前者2作の勢いをそのまま引継いで、この秋、浦沢直樹はまた私たちを驚かす大作を世に放った。それが、「PLUTO」(小学館/1巻〜)である。ロボット漫画で「プルートゥ」と聞けば、ピンとくる人もいるだろう。この作品は、天才・手塚治虫の名作「鉄腕アトム」に収録されている「地上最大のロボット」をもとに描かれているのだ。リメイクではない。だがオリジナルでもない。浦沢マジックで生まれ変わった「プルートゥ」は、アトム側ではなく、脇役だったロボット刑事・ゲジヒトの立場で語られていく。発売から1ヶ月今なお勢いは衰えず、新しい刺激を求める読者が「プルートゥ」に魅せられていく。
「おもしろい」と心の底から思える、そして「おもしろいよ」と自信を持ってすすめられる作家、それが浦沢直樹である。「いつの間にやら、本棚が彼の作品でいっぱいになってしまった!」という幸運な被害者は、今確実に増えている。
 11月末日まで、メトロ書店本店にて浦沢直樹フェア開催中!
 

あわせて、11月中旬より、コミック担当がすすめる漫画家さんフェア
保池、野濱、村岡、植田それぞれがすすめる愛情120%注ぎフェアです。こちらもよろしくお願いいたします。



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