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今月の特集へ 版元さんリレーエッセイ
ステンドグラス 編集後記
メトロ書店専務 川崎紀子 
「命の重さ」
 
 突然襲った新潟中越大地震で、母子3人が乗った車が崖崩れに巻き込まれた。このニュースを聞いた時、誰もがもう助からないと感じていた。3日ぶりに車がやっと発見されたのに日没で作業は中止。相次ぐ余震で二次災害も懸念された。翌日、阪神大震災の教訓で結成されたというハイパーレスキュー隊を中心の慎重な救出作業が再開され、テレビ画面には幼児が助け出された瞬間が映し出された。

 たった2歳の幼子は沈黙と恐怖の暗闇を4日間も生き抜いて奇跡の生還を果たしたのだ。偶然の好条件が重なったとはいえ、こんな小さなこどもがよくも生き抜いてくれたものだと目頭が熱くなった。続いて搬送された母親はすでに死亡していたとか。しかし、死してもなお彼女の魂は坊やを見守り続けていたことだろう。レスキュー隊員に手から手へと慎重に抱きかかえられた光景は見る者すべての人々に命の尊さ重さを感じさせてくれた。この光景を見て良かったと安堵しなかった人がいるだろうか。

 「命を大切にしましょう」などと学校で教える以上の効果があったのではないだろうか。救出の後隊員たちのインタビューがあった。隊長さんも他の人たちも自分たちの危険や困難には一言も言及せず、救えなかった2人が残念だったと泣きそうになっていた。隊員の家族の方たちはどんな思いでテレビを見ていただろう。今にも巨石が転がり落ちてきそうな危険な場所で救出活動に従事している夫や父を誇らしいと同時に祈るような気持ちでいたに違いない。

 メールで見ず知らずの人同士が心中するというおかしな世の中で、この幼児の奇跡の生還は、死へと向かう人たちの心を目覚めさせ、生きることの大切さを思い起こさせてくれれば良いのにと思っている。



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