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このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
 旅の始まりと旅の終わり  諫早市 るんを様

 ふと、ここではないどこかへ行ってしまいたくなる時がある。その思いを放っておかずに大切にすることが、旅の始まりだ。行き先は本屋さんで決めようか。店内をぐ
るぐるぐるぐる歩き回る。こんなにたくさんの本がある中で、心に飛び込んでくるのはどういう訳だかたった一冊だけだ。 

ここに行こう! 本の舞台になっている土地、内容からイメージされる街、作者の出身地・ ・ ・ 。この本にまつわる大地のうち、感情が高鳴った場所が行き先。ぱっと決まった。

 そして、旅支度。すぐに取り出せるよう、本は最後に詰める。

 家を背に走る列車。現実逃避にいささかの後ろめたさを感じたり。さて、本を開く。窓から差し込む光がページに二等辺三角形を作る。キレイ。素晴らしい読書環境。いや、素晴らしすぎて本に身が入らない。せっかく旅に来たんだから景色を楽しまなくっちゃ。本を閉じる。本をひざに載せたまま、列車は走る走る。移りゆく景色は万華鏡。
 旅館に到着。まずは温泉へ。人生は決してリセットできないけれど、リセットへのささやかな試みはしてみるものだ、なんて思う。湯上り、浴衣、郷土料理。するすると布団に滑り込む。今日は本はいいや。何も考えないで寝てしまいたい。

 それからの数日、本のことはすっかり忘れてしまう。

 帰りの列車で思い出す。本読もうかな。ページを開くが進まない。心地よい旅の疲れのせいだろう。お土産に持って帰りたいほどの景色の中で、うとうと。

 家に帰るまでが旅ならば、ドアを開けたこの瞬間に旅が終わる。が、まだ終わっていない。いつものベッドで眠る前、まだ置きっぱなしの旅行カバンから、この旅を共にした本を取り出す。ベスト電器の安売りで買った電気スタンドの光が、私の最高の読書環境を作り出す。さあ、一ページ目を開いて、旅の続きをそっと楽しむ。
ブクブク・コラムでは読者の皆様からの投稿をお待ちしています。テーマは「本」に関することならば自由。字数は800字程度。採用された方には図書券¥1000をさしあげます。宛先はこのメールまで。news@metrobooks.co.jp ペンネームと題名もお忘れなく!
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