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2004年6月5日号・第120号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

Dramatic Nagasaki
やっぱ小説の舞台は長崎が良か!
『黄金旅風』(飯嶋和一、小学館、¥1995)
 時代は1628年から1633年。大御所秀忠の時代から家光の時代に移り変わろうとする頃の長崎が舞台。主人公は「金屋町の放蕩息子」と呼ばれた末次平左衛門(のちの二代目末次平蔵)、「平戸町の悪童」と呼ばれた内町火消し組惣頭・平尾才介。互いに幼馴染であった二人は、少年時代は「悪ガキ」として、大人たちからも呆れられていた存在だった。
 やがて、二人は成人し、平左衛門は暗殺された父に代わり、跡を継ぐ。折りしも、長崎の民は、長崎奉行・竹中重義の、隠れキリシタンの弾圧、偽銀の密造、東南アジア諸国との密貿易など、私腹を肥やすためには長崎の民を人とも思わないその悪政にあえいでいた。
それに立ち向かったのが、平左衛門である。
 この竹中と平左衛門の戦いを中心に、物語の後半は描かれていく。その様まさには手に汗握るスリリングな展開である。
 だが、何と言っても面白いのは、私たちのご先祖様が闊歩したであろう町並みを想像しながら読むことである。今では「くんち」の時にしか耳にすることのない、長崎の古い町が登場し、堂門川(西山川・中島川)を船が行き交う。鎖国時代の長崎の町の様子が生きいきと描かれ、読み手は17世紀の長崎に魅了されること間違いなしである。


『シーボルトの眼 出島絵師 川原慶賀』(ねじめ正一、集英社、¥1890)
 次は、江戸時代末期の長崎の話。長崎で活躍した出島絵師・川原慶賀。
 私たち長崎人もいたるところでよく目にする川原慶賀の絵。あの美しい絵を描いた人が一体どのような人物だったのか、そのことは意外にもあまり知られていない。
 文政六年、シーボルトの来日とともに、彼の専属絵師となった慶賀。シーボルトにつき従い、行動をともにした慶賀に危機が迫る。そして、飾北斎の娘・阿栄との恋・ ・ ・ 。
 最後の「阿栄、黄色い風が吹いてきた。目ン玉に砂が入らないように気をつけな」という台詞は、慶賀の真っ直ぐな生き様を感じさせる。





『長崎乱楽坂』(吉田修一、新潮社、¥1785)
 
 最後は長崎市出身・吉田修一先生の最新作。しかも昭和の長崎が舞台で、最初から最後までバリバリ長崎弁乱れとび。
 やくざの伯父を慕い荒々しい男たちが出入りする三村家で暮らす少年・駿。人の残酷さ、家の盛衰、老いの悲しみ、そして故郷のしがらみ。さまざまな人々と出会い、少年はひとりの男へと成長していく。
 『パーク・ ライフ』や『東京湾景』など、おしゃれな都会派小説とは一味違った趣の本作はまた魅力的。
 曲がりくねった坂段、照りつける太陽、穿鑿好きな地元者たちの会話。きっと長崎をしばらく離れている人が読むと涙が出るかも知れない。それほど、本作には長崎の魅力がぎゅっと詰まっている。ちょっぴりまぶしく、ほろ苦い、そんな青春小説である






まだまだあります長崎関連本!

『イギリス式月収20万円の暮らし方』(井形慶子、講談社、¥1575)
 長崎出身の著者の最新作。イギリス人の年収は日本人より低い。しかし、将来の不安に怯えて暮らす日本人より間違いなく楽しい日々をおくっている。同じ一生、経済レベルでこの差はどこから生まれるのか?イギリス人の細部に宿る「幸せの哲学」を考察。


『フルーツバスケット』(松田純子、碧天舎、¥1050)
 諫早市在住の著者による処女詩集。色とりどりの「詩の果物カゴ」。新鮮なまま召しあがれ! 果物のようにフレッシュで甘酸っぱい気持ちを、凝縮した言葉にこめました。35個の舌触り豊かな言葉のデザートたち。
詩・伝えたい言葉コンテスト大賞受賞作
洋ナシの
ぽってりとした出で立ちは
ボクの想像する神と同じで
果物屋さんの前を通る度
人知れず手を合わせているんだ。
(「フルーツバスケット」より)

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