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このコーナーでは、お客様から寄せられた本に関するコラムをご紹介しています。
 長与町・PNエビカニクスで踊っちゃおう!様

 ずっと昔、まだ二十代だった頃、カルカッタのマザー・テレサの下で、一日だけボランティアをしたことがある。障害児のための施設で、食事の介助などを行った。その時の感想は、「慣れないことはするもんじゃないなあ」という何とも情けないものだったが。  
 
「愛してるって、どう言うの?」(文芸社)の著者・高遠菜穂子さんのボランティアとしての出発点も、カルカッタのマザー・テレサの施設だった。彼女はそこで数ヶ月を過ごし、2001年1月に起きたインド西部での大地震の被災地へと向かう。そこは、コレラ等の二次感染も危惧される危険な地域。それでも彼女はできるだけの準備を整え、現地に赴く。死の可能性すらあり、恐怖を感じながらも。それだけの覚悟をして向かった地で、彼女は奇跡を体験する。それは、マザー・テレサの「傷つくまで愛しなさい」という言葉の意味を、真に理解することだった・・・。
 
 彼女が今年4月、イラクで武装勢力に拘束され人質となったとき、多くの日本人が「自己責任」だとせせら笑い、「自業自得」「国に迷惑を掛けるな」と罵詈雑言を浴びせた。解放後、イラクでのボランティア活動の継続を口にしたとき、小泉首相は「まだそんなことを言うのか」と怒った。そして彼女へのバッシングは更にヒートアップした。
 
 彼女を責めたすべての人に問いたい。あなたは一体何をしたことがあるのか、と。エイズ・ホスピスで患者にマッサージをし、死にゆく人の手を何時間も握りしめて看取ったことはあるか。イラクの、ストリートチルドレン=戦災孤児のために働いたことはあるか。命がけで、愛に生きたことが果たしてあるのか。自分では何もしたことがなく、しようとする気持ちすらない人間に、彼女を非難する資格があるのか。彼女がなしてきたことと、自分自身のありようとを見定めた上で物を言ったらどうか。
 
 プノンペンで、エイズにより両親を亡くし、しかも自身も母子感染で、歩くことも話すことも笑うことさえできない4歳のおさな子を抱きしめ、キスをし、心を通わせる彼女。そこに読者が読みとるのは、まさに魂そのもの、愛そのものの姿である。
 
 高遠さん。下を向かないで。あなたは輝いているよ。あなたは、マザー・テレサだ。


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