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新潮社営業部S・O様
 
 新潮文庫は今年で創刊90周年を迎えます。今のような形式の文庫は『岩波文庫』からはじまったと、云われているのは実は正確ではありません。『新潮文庫』が発足したのは大正3年で『岩波文庫』より13年も古いのです。この年に刊行されたのは、トルストイ「人生論」・ゲーテ「若きウェルテルの悩み」・ドストエフスキー「白痴」「罪と罰」・ダーウィン「種の起源」など16点で、文学・哲学・科学・歴史等各方面にわたる西洋の名著を全訳で刊行する、という出版社としての新しい試みだったようです。(判型は今の文庫サイズより若干大きかったようです)現在の形の文庫になったのは昭和22年の第4次新潮文庫で、川端康成『雪国』など昭和の文学作品を中心に10点を刊行しスタートいたしました。
 
 さて、新潮文庫の歴史についてはこれくらいにして、このコラムでは“新潮文庫のこだわり”についていくつかの話をしたいと思います。
 
 そのひとつは『栞の紐』が付いていることです。業界用語で“スピン”といいますが、よく本に挿んである“紙のしおり”と違い、寝ながら読む時や電車の中で立ちながら読む場合にはとても使い易いものです。現在100社近くの出版社から150シリーズ以上の文庫が刊行されていますが、この“スピン”がついているのは新潮文庫だけです。ただし、このスピンは製本工程の段階で貼り付ける作業をしますので、本の天の部分を揃えてカットできず、ザラザラになってしまっています。決して製本断裁費用を惜しんでいる訳ではありません。
 
 もうひとつは『本文用紙』です。新潮社では各製紙会社に“新潮文庫用紙”として特別に作ってもらっています。
 この用紙の特徴は ●黒い活字とのコントラストで眼が疲れないように、多少ブラウン系の色を着けています。●その結果文字や図版の裏写りを防いでいます。●嵩張らずコンパクトな文庫にするため、製造工程でローラーを使って締めることで、他社文庫と比べて薄く腰が強く、やや光沢のあるものになっています。
 
 と三つほど挙げられますが、ただ厚さが薄くしっかりした本なら良いか、という訳ではありません。頁数の少ない(160頁くらいまで)本にはやや厚口のもの、600頁以上になるものには薄口の紙をと、基本的には3種類の厚さの紙を適宜使用し持ち易さをだしています。
 
 最後に、ポイントについて触れておきます。現在新潮文庫は本文のポイントを大きくしています。「ポイント」とはご存知の通り、活字などの大きさを表す単位のことで、1ポイントは一辺が0.3514mmだそうです。活字の大きさは本によって種々ありますが、本文用には8〜12ポイント、ルビ用には4〜5ポイントが多用されています。新潮文庫では平成14年1月25日改版の池波正太郎著『剣の天地(上)(下)』から始めて、名作・現代作品のロングセラー・ベストセラーを中心に、8〜8.5ポイントから9.25ポイントへの文字拡大改版を鋭意行なっています。新しい読者を開拓するため、勿論私のような中高年読者のために・・・・

S・Oさまプロフィール
  1949年12月生まれ 54歳 B型 176cm 71kg
   妻ひとり子ふたり 
   趣味---テニス・ゴルフ・スキー・深酒 
   特技はなし 
     長崎県の担当には一度もなったことは無いが何故かメトロ書店さんにはお世話になっている昼行灯です。


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