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2004年8月5日号・第122号 news@metrobooks.co.jp(←投稿はこちらへ)

初心者のためのSFマニア座談会
そうだ、SFを読もう
 2年前のこと、たまたまメトロで1冊の本が目に留まった。『航路』(上下)(コニー・ウィリス、ソニーマガジンズ、各¥1890)。未読の作者だったし、何の知識も持たないまま読んだが、これがまたすごく面白く、一気に読み終えた。その年のマイベスト1作品となった。
 この本がジャンルで言うと「SF」であるということを知ったのは、それからしばらくしてからだった。
 そう言えば、SFってろくに読んだことがない。「SFってつまらない。オタクが読むものだ」と私の中で勝手に烙印を押してしまっていた。考えてみれば、メトロニュースで特集を組んだこともないし、店頭でもSFフェアを開催した覚えがない。
 「SFもいいかも」。
 
 そんな私を導いてくれる良きアドバイザーは意外にも身近にいた。
 MMCメトロミステリー倶楽部・部員の3人、コードネーム・哲さん、南瓜さん(女性)、四時五分さんだ。
3人共、SF読書歴3、40年を超えるマニアだ。
 今回は本紙初の「SF特集」ということで、SF初心者や私のような先入観を持っている読者におすすめの作品を中心に選んで頂いた。


編:「まず、皆さん、SF読書歴が長いようですが…」
哲:「私がSFを読み始めた40数年前の当時は、SFを読んでいるとバカにされましたね。」
南瓜:「そうそう、SFなんて幼稚だし、ウソくさい、と。」
哲:「えぇ、ですから、私は大学に入ってSF愛好会を作るまでは非常に孤独でした。早川の「SFマガジン」に勇気づけられたことが何度もあります(笑)。」
四時五分:「私の場合は、もう映画や万博の『月の石』などがあったので、それほど孤独感を味わうことはありませんでしたがね。」
哲:「そうですね、SF小説というものは、特に60年〜70年代に入ってから、科学技術の発達とSF映画の台頭により、一般人の間に浸透してきたと思います。」
四時五分:「たとえば、『猿の惑星』や『スター・ウォーズ』、『未知との遭遇』など、これらの映画のおかげで、SF小説ファンも以前ほどはいじめられなくなったのではないでしょうかね?『ドラえもん』だってSFですよね。」
編:「なるほど、ちょうどその時代は高度経済成長期にもあたりますよね。これから人類はどんどん色んな機械を作り出し、宇宙に進出して行く、という夢も大きかったのでしょうね。」
南瓜:「そうね、ちょうどそれと比例するように、SF小説もどんどん出てきましたね。」
編:「で、現在までのSF小説の流れはどうでしょう?」
哲:「まずはやはり最初は『冒険物』から始まったと思います。ここでない『どこか』へ出かける、そこに『科学技術』の要素がプラスされてきた。」
四時五分:「そこに、さらに『社会・文明批判』も含まれていきますよね。」
編:「はあ、なるほど。」
四時五分:「でも、その後のSF小説は、ニューウェイブ、サイバー・パンクと、そのジャンルの幅が拡散していっています。」
南瓜:「うん、実はそうなっちゃうと私、面白くないと思います。」
哲:「この純粋なるSF小説がそうでなくなってしまう分岐点は、私は
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(フィリップ・K・ディック、浅倉 久志訳、早川文庫、¥672*映画ブレード・ランナーの原作)、だと思います。」
南瓜&四時五分「あ、そうかも。」
編:「では、その純粋なるSF小説とは?」
南瓜:「まず、
物語として面白い話でしょうね、それから突拍子もない話だけど、どことなくありえる、というか説得力がある、というのは?」
哲:「えー、SF小説を図で説明すると、左のようになります。(図1参照)」




編:「おー、スゴイ、図まで出てきました。」
哲:「SFというものは、たとえば
@ノーマルな人がアブノーマルな状況にある、これはたとえば人間が宇宙へ行くとか。Aアブノーマルな人が、ノーマルな状況にある、これは宇宙人が長崎に来るとか。」
編:「すごくわかりやすい説明。では、
Bのアブノーマルな人が、アブノーマルな状況にある、のは?」
南瓜:「これって、すごく怪しい!(笑)。」
四時五分:「やっぱり、SF初心者の方は、まずは名作と呼ばれる純粋なSF小説から入った方がいいんじゃないでしょうか?」
編:「たとえば?」
全員:「
『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン、福島正実訳、早川文庫、¥672)」
哲:「まずはこれが基本でしょう。」
* (その他の基本図書については、下の枠内で紹介しています)
四時五分:「いわゆるSFと謳われていなくても、
たとえば佐藤正午の『Y』(角川春樹文庫)や宮部みゆきの『蒲生邸事件』、北村薫の『スキップ』だって、概念としてはSFだと思いますよ。こういったのから読むのも入りやすい。」
編:「あ、そういう見方もできるわけですよね。」
四時五分:「それから、SFというものは、読み始めて最初にノレるかノレないかで、好き嫌いもはっきり分かれるのではないでしょうか?『ンなワケないじゃん』という気持ちが先に来ちゃうともうアウトですね。それだけ、最初に良い作品に出会ってほしい。」
編:「では、最後に皆さんに
SFの魅力を教えて下さい。」
南瓜:「私はね、煎じ詰めれば
『人間愛』だと思うんです。」
編:「おぉ、いきなり…。」
南瓜:「どんな時代、どんな状況にあっても、人間は手を取り合って人間らしく生きようとする。人間って素晴らしい、というのをあらわしているのではないかと。」
哲:「そう、肯定の文学ね。想像もつかない世界へ一歩踏み出していく、フロンティアを求めた文学と言えるでしょう。」
編:「何だか哲学的ですが、そう思うと、少しロマンティックな感じもしますね。」
四時五分:「そして私はエンディングが美しければ、さらに良い作品だと思います。」
編:「なーるほど、今日は皆さんありがとうございました。」

 二時間以上にも渡るSF談義でしたが、今回は初心者向けということで、基本的な話のみをここに掲載させて頂きました。また、次回以降で、応用編をご紹介したいと思います。
 SFを読んだことのない方、敬遠していた方、基本図書リストを参考に読んでみませんか?
 メトロ書店本店では、SF小説フェアも同時開催中!8月末まで。


SF初心者向け基本図書10

『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン、 早川文庫)

<哲さんおすすめ>
『ふりだしに戻る』(ジャック・フィニ、角川文庫)
『産霊山秘録』(半村良、祥伝社文庫)
『太陽の黄金のりんご』(レイ・ブラッドベリ、早川文庫)

<南瓜さんおすすめ>
『幼年期の終わり』(アーサー・C・クラーク、早川文庫)
『無常の月』(ラリイ・ニーブン、早川文庫)
『われはロボット』(アイザック・ アシモフ、早川文庫)

<四時五分さんおすすめ>
『瞬きよりも速く』(レイ・ブラッドベリ、早川書房)
『狼のレクイエム』(平井和正、祥伝社ほか)
『コインロッカー・ベイビーズ』(村上龍、講談社文庫)

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