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版元さんリレーエッセイ
新潮社営業部 T・T様

   私が勤務している新潮社は、東京都新宿区の矢来町(やらいちょう)というところにあります。落語好きの方ならばご存知じかと思いますが、一昨年惜しまれながら亡くなられた「古今亭志ん朝」師匠のご自宅がすぐそばにございました。そのせいか出先から会社に戻る途中の路地裏で、たびたび師匠のお姿をお見かけいたしました。高座へ向かう途中なのか、はたまた若手の落語家さんたちとお酒を呑みに行くところなのか、いつも小粋な身なりでトレードマークの帽子がよくお似合いでした。護国寺で行われた葬儀からしばらくして門にかかってあった【古今亭】と記した表札が取り外されておりました。今でもご自宅の前を通りかかるたび、その一箇所だけまわりと色合いが違っているのをみてはとても寂しく感じられます。
 その志ん朝の兄貴分でライバルでもあった噺家を描いた作品が新潮文庫に収録されております。タイトルは「江度前の男―春風亭柳朝一代記」。春風亭柳朝は三遊亭円楽・立川談志・志ん朝とともに四天王と呼ばれ、今をときめく小朝のお師匠さんでもありました。気風がよくて喧嘩っぱやい、そのうえ野暮が大嫌い。おまけに呑む、打つ、買うの道楽三昧。おかげで最初の入門にしくじった。でも落語のセンスは抜群で…とその破天荒さは優等生タイプの志ん朝と対極をなすものでした。しかし二人はよほどウマがあったらしく、「二朝会」という会を催し、評判を呼んだそうです。そのほかにも笑って、呆れて、じーんとするエピソード満載のこの一冊、お暇な時にでもどうぞご賞味ください。

  
T・T様プロフィール

1968年7月23日生
落語と猫と馬をこよなく愛しております。

最近読んで面白かった本〜平安寿子「グッドラック・ララバイ」
 突き抜けるような爽快感がありました。早く新作を読みたい作家です。


★編集部より:
 T・T様ありがとうございました。次回は取次店N社M様の予定です。当コラムでは出版社担当者様からの寄稿をお待ちしております。
編集部までお寄せ下さいませ

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