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2002年3月5日号・第93号 news@metrobooks.co.jp(←原稿はこちらへ)

「書店が抱える諸問題について」メトロ書店 専務 川崎紀子

 昨今書店の抱える問題は山積しているが、昔も今も変わらないのが、利益率の少なさと万引き問題である。
 
 一昔前の本屋さんは二十坪や三十坪くらいの小さな店が多く、店主がハタキを持ってまわり、立ち読みや万引きを追い払っていた。今では十倍どころか百倍も大きな店が主流になってきている。しかも、もしお客様にハタキでもかけようものなら大声で怒鳴られるのがオチである。先日も新刊を一刻も早くお客様の目に留めていただこうと真面目に棚に本を出していた社員が、中年の男性のお客様から「目障りだ!うろうろするな、俺はまだ十分しか立ち読みしてねえ!」と大声で怒鳴られ、投書してやる、責任者を出せとまで言われた。その社員は補充をする時にも「ちょっと失礼させて頂きます」とお断りもしていたのだが、棚番号を入力する時に機械から出る「ピッピッ」という音が気に障られたのかもしれない。お客様はひとりで怒りまくっておられたそうだ。最近なにげないことや、まさか、と思うようなことで怒るお客様が増えたように感じる。これもすべて今の世の中が抱えている不安感のなせるわざだろうか。
 
 万引きの問題にしても今に始まった事ではないが、万引きのやりかたが最近はひどくなってきている。昔は本を買うお金はないが、自分が読みたくて、という万引きが多かったのだが、この頃は本を売ってお金を稼ぐために万引きをするという悪質な万引きが増えてきている。なんでも良いから手あたり次第に盗るのだそうだ。盗った本かどうかは古本屋では把握できないし、なにしろ売れればお金になるのだから。
 
 過日捕まえた万引き犯はカード破産をした窃盗団の一味だった。よそで万引きした本を持って来て、あつかましくも「間違って買ったから返金しろ!」と怒鳴りまくると言う手口だった。幸いメトロシステムの単品管理のおかげで、弊店で買ったのではないことが分かり、警察をよんで一件落着となった。組織ぐるみでやられるとこちらも警察の力を頼まなくてはならない。全国的にコミックの万引きがひどいのだが、それに対処する方法を出版社サイドで検討しているほどである。
 
 書店の荒利はどこでもだいたい売上の2割程度だ。その中から家賃や人件費、返品運賃、通信光熱費等などをやりくりするので万引きされると大変なのである。だから書店でも万引き対策を色々こうじていて、以前ある書店でビデオに写っていた万引き犯を公開して問題になったことがあるが、書店サイドとしてはこれくらいやりたいのが本音だろうと思う。万引きを防ぐための監視ビデオに頼らず、入店されるお客様の目を見て挨拶すると万引きが減ったという書店もある。いろいろな立地や規模によってそれぞれの店でこの問題に取り組んでいるが、そも
そも「万引き」という言葉がいけない。これはれっきとした「窃盗」である。犯罪である。駅や交番に貼ってあるような指名手配を店の入口に貼って「万引き常習犯のご入店はお断りします」とやりたいものだが、数が多すぎて貼れなくなるかもしれない。ある書店に「万引きは一万円いただきます」という脅しの張り紙がしてあった頃、万引きをした高校生の親が一人で来て「済みません」の一言も無く、「学校には言わないでくれ」、と一万円を差し出したとか。一万円払えばそれで済むと、親は思っているのだ。あきれて物も言えない。
 
 バブルがはじけて以来、ビルの大きな空きスペースを書店に貸す企業が増え、一気に大型店が増えたが、その後もアメリカ型の千坪、二千坪の大規模書店が現れた。一フロア千坪などというとまるで体育館のようでどこに何があるか探すだけでも疲れてしまう。以前私が訪れたある書店で見かけた光景だが、そこではフロアの一隅に椅子ばかりでなく机まで置いていて、そこに座っていたお客さんは、机に本をうずたかく積み上げてノートを広げ、あろうことか本の内容を写していた。書店員はほとんどレジにいるだけで、注意もされないからだろうか、その人は悠々と長時間何冊もひろげて書いていた。
 
 力もありお金もある大きな書店はそれもサービスの一環と思っているのだろうが、その過剰サービスが当たり前になってくると一般書店は大変である。それでなくともマナーの悪いお客様が増え、旅の情報誌を買わずに、携帯に情報を打ち込んでいたり、車の雑誌を見ながらその場で電話をかけたりする有り様だ。
 
 また同じ本を買ってしまったからと言って返金や交換を強要される方も多い。その時決まって口にされるのが、「OO書店では換えてくれるのに」という脅し文句である。「あいにく当店の営業方針はOO書店とは違いますので」などとお答えしようものなら「本屋はどれでも返品できるんじゃないか。そういう仕組みになっとるんだろうが!」とお怒りになる。ご自分が間違ってお買いになったのだから、もうすこし穏やかなおっしゃり方をして頂けないものかと思う。馬鹿々々しいことだが「一度お読みになった本や雑誌の交換および返金はいたしかねます」のポップをレジに貼ろうかと本気で思っている。
 
 書店が抱える問題はまだまだあるが、全国の書店同士が同じ価値観のもとに問題解決の方向を探っていかねばならないと思う。そしてそれには良識あるお客様方のご理解とご支援がなくては出来ないことだ。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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