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ちょっと泣ける青春小説   長崎市 T・K様

『翼はいつまでも』(川上健一、集英社)
 
 青森は十和田が舞台。野球部で活躍する中学生の少年が主人公。最初、補欠部員で話が始まり、どちらかと言うと冴えない、どんくさい、どこにでもいそうな田舎っ子。話は部活を通した先生と生徒の反目あり、父親とうまく接することのできない心の葛藤あり、中学の男の子にありがちな、ガキの時期の心に溜まったものを発散させるような行為あり、そして、ちょっと色気づきだした男の子と女の子の気持ちの交錯ありと、読んだ人が自分の中学時代を思い返せるようなストーリー。
 
 この主人公、たまたまラジオで聴いたビートルズの曲がきっかけで、自分の中に何か思いっきりやってみようという勇気が湧いてくる。それからの主人公の一日一日が面白い。泣けるのは、ラストの2つの場面。ひとつは好きになった女の子との最後の場面。ここで、歌われる「オーマイラブイング」。僕もビートルズの中で好きな曲のひとつなのだけど、この歌詞がずんずん響いてくるところ。ビートルズファンにはぜひ読んでほしい。もうひとつは主人公の友達の万年補欠の子から受けた、野球部の顧問の先生の受けとめた気持ちが語られる同窓会での話の場面。この話を読んでいて、先生たちがこんな調子だから日本をダメにするんだよと途中思うのだけど、このラストで述べる先生の言葉によって教師に求めたいものが得られた気がする。学校の先生、この本を読んで何か感じてもらえないだろうか。
 
 普通の男の子なんだけど、かっこいい。本の帯にあるとおり、まさに青春小説。30代の僕にとって、自分の若い頃を振り返る清々しい気持ちになれる、そんな本でした。
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