メトロニュース メトロニュースメニューへ

今月のTOPへ ブクブクコラム
版元さんリレーエッセイ 編集長の読書日記

2002年1月5日号・第91号 news@metrobooks.co.jp(←原稿はこちらへ)

あけまして おめでとうございます
    旧年中はお引き立てを頂き有難うございました。本年もどうぞよろしくお願い致します。 メトロ書店 専務取締役 川崎紀子
 昨年は九月に起きたニューヨークのテロ事件のせいで、重苦しい気分のまま一年が過ぎようとしていたところへ、愛子様ご誕生のニュースが届いた。テレビで色々な世代の人にインタヴューしていたが、赤ちゃん連れの若い夫婦、小学生や中高生、サラリーマンや主婦、おじいさん、おばあさん、そして皇太子様や雅子様のご学友たちなど、マイクを向けられたすべての人々が皆素晴らしい笑顔で口々に「おめでとう」と我がことのように喜んでいた。こんなにちいさなひとりの赤ちゃんが国中の人達に笑顔をもたらせ、やさしい気持ちにしてくれるのだから、愛子様はミラクルベビー、良い意味で皆のアイドルと言っても良いだろう。こどもはその家庭の宝であることは勿論だが、次代を担う国の宝、グローバルに言えば地球の宝と言える。ひとりの赤ちゃんの誕生がこんなに祝福される一方で、沢山の赤ちゃんが日本のどこかで虐待に会い、地球のどこかで戦禍に会って命を落としている。これはひとえに大人がこどもを殺しているのである。次の時代を担って行く子供たちをどう育てて行くのか。アフガニスタンの子供達が描く絵は戦争の風景ばかりだと聞いた。戦後五十六年も経ち、平和が当たり前の日本では想像も出来ない悲惨な毎日を経験してきた子供たちが、これからどんな絵を描いて行くのだろうか。花や緑や太陽にあふれた幸せな絵がかけるように願うばかりである。
 

 さて本を読める境遇にある世界中の幸せなこどもたちが読んでいるベストセラーは?
 答えは勿論「ハリーポッター」である。第一巻の「ハリーポッターと賢者の石」は昨年十二月一日に映画も公開された。今までも色々なファンタジーが読まれてきたが、新刊でこれだけベストセラーになった「子供の本」は近年にない。エンデの「モモ」や「はてしない物語」もそこそこに売れはしたが、「ハリーポッター」の売行きは驚異的である。「近頃の子供は本を読まない」と言っていたのは大人たちだったが、おかしいことにその大人たちがはまってしまっている。「子供に買ってやったのにすぐに読まないものだから私が先に読んだら面白くて」と言って二巻を買われたお客様。次の巻が出るまで待ち遠しくて洋書を買っていく学生さん。子供向けに書かれた本なので、原書でも読みやすいのだが、訳者の的確な表現で生き生きとした日本語になっていてるからこそ、ここまでベストセラーになったのだ。
 
 さあ今年はどんな本が世に出るだろう。ハリーポッターで読書の楽しさ、面白さを経験した子供たちが次に手にするのはどんな本だろうか。書き手の方にとっては今まで以上に気の抜けない、しかし書き甲斐のある読者層が育ちつつある。
 
 「本の持つ力」と読者による宣伝、「この本面白かった。良かった」という当たり前のことが書店業界、出版業界を支えて行く活力になるのだ。それには業界人が率先して本を読まなくてはいけない。毎日入荷する本を並べるだけで帯しか読まない書店員、新刊の紹介はしても中身を読んでいない営業マン。読者のニーズも考えずに相変わらずひとりよがりの企画を立てる編集者。様々な本と出会う場に居る私たちこそが、読者にお薦め出来る本を探し出さねばならないと思う。
 
 それが今年の課題である。


メトロニュースTOPへ