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版元さんリレーエッセイ 編集長の読書日記

長崎市 K・F様

 県庁所在地の本店に住む友人から、田舎の支店に転勤になったという挨拶状が来た。単身赴任だから引越し荷物もほんの少々、重いのは漱石全集だけ、と笑わせる。本店勤務と比べると、時間に余裕が出るだろうから、再読に挑戦してみる、と本人は真面目だ。
 しかも、今度の支店勤務で還暦と定年を迎えるから、漱石全集を再読するには人生の区切りの上からもいいタイミング、という。栄転祝いと全集チャレンジへの羨望と激励の気持ちを返事に書いた。
 漱石好きでも読むのは小説に限るのではないか、他はせいぜい書簡か俳句程度。それが全集となると、講演会の原稿か、新聞雑誌への投稿雑文、大学での講義ノートまで含まれるはずで、全集を読み通すとなると相当の読書意欲が必要のはず。
 広く浅く多くの作家を読み漁るより、一人の作家の全てを、すなわち全集を読む方が得るものは大きい、とはよく指摘される読書法だ。この指摘は多分、その通り間違いないだろうとは思うが実現困難である。理由は二点。
 小説作品は面白いが、漱石と言えども、大学の講義ノートの類は面白くなかろう。専門家ならともかく、門外漢の英文学講義など退屈を我慢して読みつづける意思が必要だ。世の中には無数の作家がいる。あれも読みたい、これも読みたいという欲求を抑制し、限られた読書時間を一作家だけに限定しなければならない禁欲主義に耐えられるか。
 この二点の疑問は、春秋に富む若い世代ならば当然かも知れないが、還暦を迎える年ならいかがなものか、と冷笑されるかも知れない。その年齢というのは、あれも読み終え、これも読み終えているべき年頃だから。
 個人全集を愛読する読者も多いと思う。その人達の読み始めた動機と効用を知りたい。そして他人へも薦めるかどうか。メトロニュースで特集して頂くとありがたいが…。

★編集部より:福島様ありがとうございました。丁度今年は全集出版ラッシュ。ぜひお客様にお尋ねしてみたいです。
 
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