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2001年10月5日号・第88号 news@metrobooks.co.jp(←原稿はこちらへ)

ミーハー鈴木のミステリーな一夜    メトロニュース編集長・鈴木綾子
「もう死んでもいいっ!」
 私、鈴木は嬉しさの余り「キャーーッ」と叫び出したくなる欲望を必死に抑えていた。

 
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 9月28日(金)、東京・飯田橋はホテルエドモントの悠久の間にて。東京創元社主催の「鮎川哲也賞」「創元推理短篇賞」の授賞式が行われた。私は「創元推理21」というミステリ誌に書店員として寄稿させて頂いている関係上、このパーティのご招待を受けたのだ。
 
 文学賞の授賞式に参加するのは初めてのことで、しかも私の愛する東京創元社の賞である。こんなに嬉しく、光栄なことはない、ご案内を頂いた数ヶ月前から毎日ずっと楽しみにしていた。だが、私は実際もっとお堅い雰囲気の授賞式を想像していて、選考委員の先生数名に、折りたたみ椅子に座った関係者…、というような地味なイメージがあったので、この授賞式がこんなにスゴイとは全く予想していなかった。
 
 開始の15分前に会場に着く。
いつも爽やかな東京創元社・営業部ご担当の山口諭さんに迎えられる。ドキドキしているので、芳名帳に記入する時も手が震えてしまった。開始までロビーで待つように言われる。はじめ閑散としていたロビーにだんだん人が集まってくる。すると、「アレ?あれは逢坂剛先生じゃない?」本や雑誌などでよくお顔をお見かけする先生がいらっしゃった。慌てて、山口さんのところに駆け寄り、「今日は選考委員の先生方以外もいらっしゃるんですか?」とお尋ねすると、「そうですね、大抵の推理作家の先生はいらっしゃるんじゃないでしょうか」とのお返事が。「え!そうだったの!」そう思っていると、今年の4月に当店でもサイン会にお越し頂いた鯨統一郎先生のお姿が。慌ててご挨拶をすると、「あれー、どこかで見た顔だと思いましたよ。こんな所でお会いできるとは驚きましたね」とおっしゃって頂く。鮎川哲也先生も奥様とお見えになる。まだまだお元気そうだ。そうこうしているうちに、授賞式は始まり、会場内へ。
 
 今回、
第11回鮎川哲也賞を受賞されたのは、門前典之さんの『建築屍材』(原題は『人を喰らう建物』)。門前さんは1957年、下関市生まれ。熊本大学卒。現在は建設会社に勤務されている。第8回創元推理短篇賞を受賞されたのは、氷上恭子さんの『とりのなきうた』。氷上さんは東京都生まれ。御茶ノ水大学文教育学部卒。スーツ姿がまだしっくり馴染んでいない、こりゃ随分お若い方だなぁと思っていたら、1974年生まれと伺った。お二人とも受賞の挨拶のときには声が震えていらっしゃって、今にも嬉し泣きしそうなご様子に(そら、そうでしょう。こんなに大勢の有名な先生方の前で)、思わずこちらまで目頭が熱くなってきた。選考委員の先生方のお言葉を拝聴し終わると、さぁパーティのはじまりだ。
 
 ふと周りを見渡すと、いつの間にか会場には入りきれないほどの人、人、人。あ、あれは
北森鴻先生だ、あの黒猫を肩に乗せていらっしゃるのは倉阪鬼一郎先生だ、と、この時点で鈴木はすっかりただのミーハーと化してしまった。まずは有栖川有栖先生2年前の福岡での座談会(MMC主催)のお礼を申し上げると、「あぁ、あの時は楽しかったですねぇ」とソフトな関西弁でおっしゃって頂き、感激。そして目の前を北村薫先生が通り過ぎるのを見たときには…、「きゃーーっ!」本当に叫び出したくなるのをこらえるのが大変でした。恍惚とした顔をしているところへ、東京創元社の戸川社長が。「鈴木さん、楽しんでいらっしゃいますか?」「へぇ、もうそりゃありがとふごじぇえます(もう嬉しくて呂律が回っていない)」「このタイピンいいでしょ。金の髑髏なんですよ。このカフスもどこかの骨の形なんですよ」「はぁ、そりゃすんばらしい」そう答えながらも、キーボードを小脇に抱えた二階堂黎人先生の方に目が行ってしまう。
 
 
加納朋子先生は一度写真を拝見したことはあったけれど、それでも生で拝見する先生は、もう想像通り!先生の作品の雰囲気そのもののお姿。北九州のご出身だったことを思い出し、お話しさせて頂く。声も想像通りの柔らかな声で、「まぁ、長崎、一度行ったことありますわ。素敵な町ですよねぇ」と言って頂く。「ぜひまた遊びにいらしてください」とお願いする。
 
泡坂妻夫先生のコインの手品も目の前で見せて頂く。おぉ、これが噂の泡坂マジック!
 
 会場を見まわしていると、同じ作家の先生方の中にも仲の良いグループがあるらしく、大体そのグループで固まっていらっしゃる。それを見ながら、変なことをふと思った。これって、メトロ書店のミステリーコーナーの棚の並び順と同じじゃない?何だかまるで本棚から作者が抜け出してきたようなバーチャルリアリティ的な幻想を抱いてしまったのだ。
 
 楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、もうお開き。しまった、すっかり舞いあがってしまってお食事を頂くのを忘れていた! おなかは減っていたけれど、心は満腹。その夜は、嬉しさと興奮にめまいがしてなかなか寝つけなかった。
 東京創元社の皆様、本当にありがとうございました。   メトロニュース編集長・鈴木綾子
第11回鮎川哲也賞受賞作・『建築屍材』(門前典之、東京創元社、¥1900)
建設中のビルで浮浪者が目にしたものは、解体され、ナンバリングされた三人の死体…。名探偵・蜘蛛手シリーズ第1弾!
建築屍材

「創元推理21」2001年冬号(¥700)
  第8回「創元推理短篇賞」受賞作などが掲載。「書店からの眺め」欄には、当ニュース編集長も寄稿。
創元推理21
創元推理短篇賞秘話は編集後記へ

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