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版元さんリレーエッセイ ステンドグラス
メトロ書店専務 川崎紀子 
 六月一日は「電波の日」だが、長崎のくんち大好き人間にきくと、違う答えが返ってくる。それは「小屋入り」なのである。どこの小屋へ入るの?それお相撲?何の事?
 
 なぜ「小屋入り」と言うのかというと、これは芝居などの公演の準備に入る時に使われる言葉で、今年のくんちの踊り町、年番町の人達が朝早くから諏訪神社へ詣で清祓を受けるのである。この日は、皆、正装で踊りを奉納する娘さんたちも着物姿でお参りするので諏訪神社の界隈はぱっと華やかになる。主役の人だけでなく地方(じかた)や鳴り物、シャギリの方達も参列する。季節はずれのシャギリの音だが、聞こえてくるとウキウキする。十月の本番に向けてこの日から稽古が始まるのだ。七、八、九の三日間のためにまるまる四ヶ月かけて伝統行事を受け継ぎ伝えていく日々が始まる。 私事で恐縮だがその昔、娘達は諏訪幼稚園にお世話になった。上の娘は幼稚園の運動会でこども龍踊りの囃子を経験してからすっかり龍踊りのとりこになってしまい、何とかホンモノの龍踊りに出たいと駄々をこねた。「踊り町でもないのに困ったわ」とクラスのお母さんに言うと、な、なんとその方の実家は諏訪町で、今度踊り町だというではないか。可愛い子供の願いをなんとか叶えてやりたいとお願いし、本物の龍踊りに出させていただいた。山下監督の厳しい稽古に皆必死で頑張った。それは長崎大水害の前年で、くんちの日も雨がひどく降り順延になった。朝五時前から支度をして待機していたのにやめになったので、クーニャンの髪型のままで登校させた事を思い出す。
 
 この次の年は本社のある出島町が踊り町で、娘達は二年続けてくんちに出る事になり、つきそいの私も沢山の方達と知り合い、得がたい経験をした。
 
 「小屋入り」、シャギリの音。
 
 六月の最初の日は長崎っ子にとって、そして特におくんちを経験した人達にとっては 格別の日なのである。


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