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@「メトロ書店で見つけた本」神奈川県厚木市 H・I様A21世紀に残したい本  長崎市 南瓜様
Bちょっと「ジャンプ」してみたく メトロニュース編集長 鈴木綾子
「メトロ書店で見つけた本」  神奈川県厚木市 H・I様

 今、私の本棚に七冊の本がある。永積洋子著「平戸オランダ商館の日記」(全4巻、岩波書店)と、村上直次郎著「長崎オランダ商館の日記」(全3巻、岩波書店)である。
実は、これらの本の入手をめぐってはなつかしい思い出がある。平成十二年、長崎県内の某大学の非常勤講師をしていた私は、授業が終わるといつも長崎を訪れていた。(蛇足ながら、私の専攻は長崎学であり、従って、長崎は第二の故郷である。)

 そして、11月上旬、開業して間もないアミュプラザ長崎に入店した。すると、3階に書店があるではないか。本好きの私は、その3階の書店すなわちメトロ書店本店を訪れることにした。日頃より様々な書店を訪れているが、入店した途端、メトロ書店がすばらしい書店であることが判った。何と「長崎の本」コーナーが設けられていたのである。
先程述べたように長崎学を専攻している私は、そのコーナーを見渡した。そして、上記の「日記」を偶然にも「発見」したのである。実は、これらの本は絶版で、それまでも探していたものの、新本としては入手は極めて困難だったのだ。直ちに購入したことは申すまでもない。
 
 本棚を見てみると、入手したときの感動が蘇ってくる。現在、「オランダ人が見た長崎くんち」について研究中であるが、この研究が実施できるのも、メトロ書店で「日記」を入手し得たおかげだと感謝している。(松蔭女子大学教授)


*ありがとうございます。長崎の書店である以上、「長崎の本」コーナーは絶対に必要!と作ったコーナーですが、このようなお手紙を頂戴してとても嬉しいです。ありがとうございました。

21世紀に残したい本  長崎市 南瓜様

「哀愁の町に霧が降るのだ」
(上・中・下巻)」椎名誠 著            
 
 時は1964年(東京オリンピックの年)、6畳一間のオンボロアパートで共同生活を始めた4人の若者の話と、この本が書かれた82年頃の現在とを行きつ戻りつ語られます。
 
 下巻の見返しに「椎名誠とそのやさしくも凶暴な仲間たちがくりひろげる愛と闘魂と食欲の七転八倒ズッコケ大ロマン…」とありますが、とにかく食欲と酒盛り。
 
 この本を初めて読んだとき、自分の学生時代の下宿生活を思いだし、懐かしく嬉しくなり、当時の仲間に「読め」と勧めてまわりました。
 
 私は著者より数年後の生まれですが、この本で語られる暮らしの匂いや手触りはまだほとんど変わらず残っていました。貧乏国だった日本がだんだん金持ち国になろうとしていた時代で、落ち着きなくエネルギーにあふれていたように思います。(若かったからかな?)
 
 そんな20世紀日本の、ある時期の青春を伝えてくれるものとして残って欲しいと思います。

ちょっと「ジャンプ」してみたく メトロニュース編集長 鈴木綾子

 先日、横浜の夫の実家へ帰ったときのこと。長崎へ帰る飛行機の時間までに余裕があったので、さてどうしようか、と考えて、前々から気になっていた『ジャンプ』(佐藤正午・光文社)の一節を確かめることにした。
 
 それは、175頁・主人公の男女が「デュエンデ」という香水を買いに来たことでめぐりあうシーンであった。その時、店には在庫が一つしかなく、それゆえに2人は交際を始めるようになったのだった。
 
 「デュエンデって、一体どんな香りがして、ボトルはどんな形をしているんだろう?」私はちょっと気になったのだった。
 そこで、ちょうど良い機会だとばかりに、小説の舞台となった横浜・山下町の「バーニーズ・ニューヨーク」を尋ねてみることにした。もちろん独りで、である。
 
 石川町の駅で降りて、まだ眠っている中華街を抜けていく。確か山下町はこっちの方だった、と記憶を頼りにしながら歩く。実はバーニーズ・ニューヨークに行くのは初めてである。何度か行きつ戻りつしながら、ようやく辿り着くと、開店までにあと40分時間があることに気づいた。
 
 ここで帰るのももったいないので、山下公園方面に向かう。十年近く前、彼氏と一緒にこの公園に何度か来たことを思い出したりする。風が冷たいので「ホテルニューグランド」のティールームでココアを飲んで時間つぶしをすることに決めた。そしてこのティールームにはその彼氏とは一度も来たことがないことを思い出した。
 
 開店時間を5分過ぎた頃、入店する。香水売場へ行き、店員に尋ねた。
 
 「デュエンデという香水はありますか?」…すると、
 「申し訳ありませんが、品切中でございます。」「人気のある商品なのですか?」と尋ねると、「いえ、5、6年前には人気があったのですが…、今はもう仕入れておりませんで…」との返事。期待していただけに、かなりがっかり。
 
 結局、「トルコ石」という自分の誕生石と同じ名前の香水を買って、香水売場からは退散。
 
 でも、その前にひと言付け加えるのを忘れなかったのは、本屋根性と言うべきか。「この香水、今のベストセラーの本に出てくるんですよ」「はぁ」「ひょっとして今までにも尋ねられませんでしたか?」「…いえ」
 
 こんなこと確かめにくるのは私だけであった。謎は謎のままで残った。
 
 長崎の自宅に帰りつき、本棚の『ジャンプ』を手に取ると、「あっ、そうか!」
主人公たちが「バーニーズ・ニューヨーク」で出会ったのも、5年前。つまり、この香水が人気があった時代のことなのだ。恐るべし、佐藤正午。それに早く気づけば良かった。
 ある寒い秋の午後の横浜であった。

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