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2001年4月5日号・第83号 news@metrobooks.co.jp(←原稿はこちらへ)

アントニオ猪木特集「闘魂再び」経済アナリスト ミスター・ウォーリー
 2000年秋から現在まで、アントニオ猪木関連の書籍が続々発売されている。アントニオ猪木といえば新日本プロレス、参議院議員を経て、199844日東京ドームで引退。引退後おとなしくなるどころか、UFO(世界格闘技連盟)を設立、自らチェアマンに就任し、現在は総合格闘技イベント「PRIDE」のプロデューサーも兼務する。
 
 先年ジャイアント馬場が逝去し、全日本プロレスが分裂した際、積極的に支援を呼びかける猪木の姿を見て、また自ら設立し地位を追われた新日本プロレスの分断を画策する猪木を見て「ああ、馬場亡き後、日本のプロレスは全て猪木の手の中に落ちてしまうのか…」と感じさせてしまう充実ぶりである。

 さて、それはさておき、ブラジル移民時代から帰国、スターダムにのし上がり引退するまでの半生を描いた「アントニオ猪木自伝」(新潮文庫、514円)から、引退後の言行録である「猪木語録」(メディアワークス、1500円)、「格闘魂」(角川書店、838円)、21世紀のあいだみつおか?と業界騒然の「猪木詩集 馬鹿になれ」(角川書店、1500円)、「猪木毒本」(ベースボールマガジン社、762円)、「猪木写真集・人生のホームレス」(ぴいぷる社、5000円)と立て続けに発売された書籍の山。猪木の活動は年を追うごとに激しくなっている。なぜいま猪木なのか?

 それを知る手がかりは格闘技界のグローバル化にある。それでは、‘90年代後半から現在までの世界のプロレス事情を見てみよう。
 まずは、並み居るライバルを圧倒した上に、先日最大のライバル団体WCWを買収し、米国マット界を制覇した米国プロレス界の「織田信長」ことビンス・マクマーン率いるWWFの世界戦略があげなくてはならない。

 WWFは、米国ナスダック上場企業でナスダック公表のマーケットバリューは約1,100億円。世界的なエンターテイメント企業である。

 米国も以前は、全国に中小プロモーターが割拠し、プロレス興行を行っていた。ニューヨークに本拠を構えるプロモーター、ビンス・マクマーン・ジュニアは、地域ケーブルテレビを買収することを皮切りに、全国展開を試みる。同様にメディア帝国ターナーグループが所有し、巨大資本により全国制覇を試みたWCWと対決、WWFWCWを買収するという結末で完全勝利し、いまや世界100カ国以上からテレビ放映権料を得ている。当然、WWFは潜在的な巨大マーケットである日本進出を画策し、みちのくプロレス系レスラーをリングに上げていることはご承知のとおり。(以前1回だけ日本興行が行われたが失敗)さらに他ジャンルスポーツへの進出として、新アメフト団体XFLへ既に100億円近く出資している。

 つまり、プロレス興行はもはや怪しげな見世物ではなく、経済的には投資家が真剣に考慮するビジネスとなり、莫大な放映権料や商品ロイヤリティが背後に控えている。
 猪木のUFOでは、日本のみならず米国にもリクルーターとして佐山聡を送り込むなど、複数拠点構想を描いている。これは偶然なのか?猪木はモハメド・アリ戦による知名度や過去に国会議員だったこともあり顔も広い(関係ないがアイルトン・セナの友達でもある)。
 さらに、日本における新日本と全日本という2大体制の崩壊と、K1PRIDEとアルティメット系団体といった新世代格闘技の台頭がある。
 
 マーケットは混乱しているのである。このあたりは米ソ冷戦後の世界にも似ており、世界は新しい秩序を求めている。

 猪木が、フリー系団体の主宰として、またプロデューサーとして動きが激しくなっているのは、この「猪木の世界戦略」に基づくものではないのか?

生臭い話しはこれくらいにしておこう。
 猪木といえば「闘魂」と「ロマン」である。
 彼の闘いやスキャンダルも含めた生き方そのものがドラマティックであり、「闘魂」と「ロマン」を体言するものである。彼の激しく前向きな人生を「猪木自伝」で感じ、「猪木語録」では語られた闘魂のかけらを心に抱いて歩いて行かなくてはならないことを教えられる。そして、「馬鹿になれ」では、華やかなリングの躍動、悲壮感と不安、またその一方で平穏な心と希望があることに気づく。
 最後にいかにも猪木にふさわしい、猪木の人生そのものの詩を掲載して終わりとする。
 この道をいけばどうなるものか

 危ぶむなかれ 危ぶめば道は無し

踏み出せば

その一足が道となり その一足が道となる

迷わず行けよ 行けば分かるさ

19984月に引退興行で自ら披露し、日本では南原清隆らの朗読で広く知られている、一休禅師の詩である。

*メトロ書店本店にて、4月中旬より「1、2、3、猪木だぁー!」フェア開催予定。

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