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編集後記 編集長の読書日記
本屋さんの思い出 長崎市ドサ健さん

 
子供の頃、本屋さんへ入ると胸の動悸がはやまった。そこは、絵物語で読む楽園の世界そのものだった。未知の景色や生き物に出会える感動で身が震えるようだった。
 少年雑誌を買おうと握りしめていた小銭で、幾度もの逡巡をへたのちに、その決断が間違っていないことを願いながら、薄い文庫を買ったこともあった。それらの本は何だったのだろうか。宝島、トム・ソーヤの冒険、ロビンソン・クルーソー…?
 
 いつの頃からか本屋さんがつまらなくなった。書棚から聞こえていたはずの本のつぶやきが消え失せてしまった。分厚い全集の間にまぎれていても、自分を主張する声をあげる本が確かにあったのに。
  
本屋さんによって自己主張する本の種類はまちまちだった。冒険ものが威張っている本屋さん、文学の薫りでむせ返るような本屋さん…映画の本、思想書、科学書などなど、本屋さんはどこも同じではなかった。だから、雑誌を買うついでについ手にする本は、訪れた本屋さんによって異なった。
 
 それが今は、どこの本屋さんでも同じになってしまった。同じ売場の顔、本を知らない書店員の跋扈。全国一律に金太郎飴の世界だ。
 本が商品になってしまった。「流通」という名のビジネスのもとで、大根と同じ扱いをうけるようになってしまった結果だ。ベストセラー中心、いやベストセラーにあらずば本ではない。これが今の本屋さんである。
 
 ビジネスで本を読む読書というのは多くないはずなのに、本屋さんはビジネスで本を売ろうとしている。効率、簡便、合理ばかりの追求だ。必然、その行きつく先は大型化、チェーン化しかない。そして、コンビニエンスストアや、ベストセラー構造を逆手にとった新手の古本ビジネスとの競合である。さらに今度はインターネットビジネスの参入という脅威にさらされ始めている。
 
 もう、昔みたいな個性ある本屋さんはムリなのだろうか。ベストセラーを買わせようとするのではなく、本屋さん自身の目で選んだ本を売ってゆく姿勢は時代遅れなのだろうか。
 
 ぼくはまた本屋さんに幻想をいだいているのかもしれないが、本はコンビニで買ったことは一度もないし、インターネッタで注文しようとも思わない。絶版本を探すときでもないかぎり、古本屋に足をむけることもない。個性的な本屋さんが3軒も身近にあれば、大型店だからという理由だけで利用することもないだろう。

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