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世界大戦の思い出(2)                  

 運輸省鉄道総局総務局総務課というのが正式な僕の執務先である。昭和17年、既に戦争は本格戦局に突き入り、国民生活はすべて戦争一色である。戦争の進展とともに国鉄の運営をどうするか、その戦時国鉄の基本計画を策定するのが、新しいわれわれの組織の任務であった。そして、昭和18年度、19年度、更に終戦の昭和20年度の3年間の基本計画をここでまとめあげたのである。  

 中央に来てみると、情勢がよく判る。戦況は華々しく報道されるが、わが国の戦力の将来は必ずしも万全ではない。  

 企画院でまとめた物資動員計画というのがあった。鉄鉱、燃料を始めとする戦時物資の生産、動員計画である。地方にいては全然判らない日本の戦力源といえるこの生産力の実態に接して僕はあ然とした。  

 もう将来のことを考えている余裕はない。限られた大切な鉄や石炭をどう有効に確保するか、それだけが現下の命題である。  

 
 戦時の企画に参与してどうしても僕に理解できなかったのは、何故日本はこんなに劣る戦力で、アメリカ相手に戦争を始めたか、という疑問であった。今更、それがわかったとしても最早どうしようもない船に乗ってしまったのだが、先輩や参謀本部の若手参謀などに時にふれ聞いても、誰も応じてくれない。僕なりに考えたところでは、あれよ、あれよという間に戦線が拡大してしまって、気がついたときはもう引き返すことができなくなったのではないか。始めからの計画ではなく、やむなく飛び込んだ火中だったのではないか。  

 そういえば、日本は日露戦争でも明治37、8年の2年間の戦争だし、第一次大戦では戦勝国側で楽な戦いしかしていない。今度も真珠湾の奇襲から短期決戦に持ち込めば勝つチャンスはある、とそう読んだのではないか。しかし、大国の力はそう甘くなかった。ナポレオンもナチスもモスクワは落とせなかった。アメリカを屈服させるのは容易なことではない。騎虎の勢いで軍艦マーチでおどらされた、国民の悲劇はこれから始まるのである。

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