ミセス真青(マブルー)No.0016の 勝手気ままな事件簿…1
[アサヒビール怪事件& 老人失踪未遂事件]  

 5月某日、大好きな午後のお茶と庭いじりをさしおいてまでも出掛ける気になったのは、あのお方の館に何故か妙に惹かれるものがあったからですのよ。その日は朝から晴れ晴れで緑が目に眩しゅうございましてね。貸し切りのバスの中は、私ども会員のはやる気持ちを誤魔化すようにお菓子やビールが乱れ飛び、それはまあ妖気ではなく、陽気なこと。まさか行く手を怪事件が阻むなんて、この私でさえ想像も出来ませんでしたわ。
 
 行く先は何を隠そう、小倉の「松本清張記念館」。途中のお弁当にも関わらず全員生き延びたのは、後から考えると出来過ぎでした。ただ記念館に着いてから、なんとなく胸騒ぎがしておりました。人のいうことを完璧に無視して変にウロチョロされている。その方の動向が何故か気になっていましてね。なにせ80を超えるご高齢でしょう、余計に心配でもありましたし…。

 それにつけても感動いたしましたのは、入り口に飾られた本、本、本。まるでステンドグラスか何かのアートみたい。あんなにぎょうさんご本を書かれていたとは、ホンにオドロキ桃の木20世紀ですわ。

 次なる目的地は、若い有栖川さまの待つ博多。かの君への熱い想いをお互い悟られないよう、さっさと小倉を後にして小1時間も走ったでしょうか。突然わき起こるヒソヒソ、ぶつぶつの声。「えっ、どうしてこの道を降りないの?」「あそこへ行くには絶対、あの道よ…」そんな声をよそに、バスは見知らぬ場所をひた走りました。誘拐!バスジャック!?。でもこの顔ぶれでは身代金を要求してもねえ(失礼!)。車中にも徐々に不安と不穏な空気が漂い始めたその時「右手の前方に見えるのがみなさんお待ちかねの朝日ビールのビルです」と運転手さん。一瞬、絶句したサラハレスキーが言い放ちました。
「アサヒビールじゃなくて朝日ビルなのよ!」そうなんです。前日の電話でのやりとりでお互いが勝手に納得して起きたこの怪事件は、その場で快決しましたの。オホホ。  
  ご講演の後は、若やいだ雰囲気に少々酔いながらご夕食(ステーキでしたのよ)をご一緒に。私ども会員は13名!で一般の方は2名。そこで13という数字が意味するものと、あの方の様子に気が付けばよかったのだけど。お食事にほっと気がゆるんだのがいけなかったのでしょう。イヤな予感は当たるものですわ。他の殿方が用足しに行こうとした時、「1階に降りればよかとやろ」という言葉を残したまま、忽然と消えてしまわれたのです!あのご老人が。頼れるハレスキーは有栖川様との密会!へ。心細いやら情けないやら。

 でも私、心に決めておりましたのよ。もしこのまま見つからなくても、あの方なら、あの我の強さならどこでもきっと生きていけるはず。そうこうするうちにもお約束の時間はどんどん過ぎて40分余り。探し疲れてピンクの脳細胞も働かず、諦めようとしたその時、失踪したときと同じように突然姿を見せて言いました「お土産ばこうてきた」。  

 失った時間の遅れを取り戻すべく、はたまた怪事件への罪を償うためか、運転手さんは、ビデオ上映(名探偵コナン)やら、高速を高速でぶっ飛ばすやら大変なサービス。途中、ひとり、またひとりと車中から投げ捨てる、という念の入れようでした。これだからミステリーツアーはやめられませんわね。
(終)

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